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浦和地方裁判所 平成3年(行ウ)3号 判決 1997年5月19日

平成三年(行ウ)第三号事件原告・同年(行ウ)第五号事件被告

草加市

右代表者市長

小澤博

右訴訟代理人弁護士

加藤長昭

平成三年(行ウ)第三号事件被告・同年(行ウ)第五号事件原告

A

外九名

右一〇名訴訟代理人弁護士

大治右

高橋秀忠

主文

第一  平成三年(行ウ)第三号事件について

一  平成三年(行ウ)第三号事件のうち、草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決につき、(別紙四)「原告の請求する宅地、建築物及び借地権の価額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の4番、6番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「2 建築物」欄に各記載の各価額のとおり右裁決の変更を求める各訴えは、いずれも却下する。

二  草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決中、(別紙三)「本件裁決における宅地、建築物及び借地権の価額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、3番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の2番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の2番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、2番、3番、5番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の4番、「2 建築物」欄に各記載の各価額を、(別紙一)「裁決変更額」の「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、2番、3番、4番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「2 建築物」欄に各記載の各価額にそれぞれ変更する。

三  平成三年(行ウ)第三号事件原告(同年(行ウ)第五号事件被告)のその余の請求をいずれも棄却する。

第二  平成三年(行ウ)第五号事件について

一  主位的請求について

1  平成三年(行ウ)第五号事件の主位的請求のうち、草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決につき、(別紙五)「被告らの請求する宅地、建築物及び借地権の価額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の5番から7番、「3 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の4番から6番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の4番から6番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」のうち、「2 建築物」、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「1 借地権」の1番、2番、「2 建築物」欄に各記載の各価額のとおり右裁決の変更を求める各訴えは、いずれも却下する。

2  平成三年(行ウ)第五号事件原告ら(同年(行ウ)第三号事件被告ら)の主位的請求のその余の部分はいずれも棄却する。

二  予備的請求の一について

1  平成三年(行ウ)第五号事件の予備的請求の一のうち、草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決につき、(別紙七)「被告らの請求する宅地、建築物及び借地権の価額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の5番から7番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の4番から6番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の4番から6番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」のうち、「2 建築物」、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「1 借地権」の1番、2番、「2 建築物」欄に各記載の各価額のとおり右裁決の変更を求める各訴えは、いずれも却下する。

2  草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決中、(別紙三)「本件裁決における宅地、建築物及び借地権の価額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の3番、4番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の2番、3番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の2番、3番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、6番ないし10番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「八 被告Jに係る宅地の価額」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番欄に各記載の各価額を、(別紙一)裁決変更額の「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、3番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、2番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、2番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、5番ないし9番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」、「八 被告Jに係る宅地の価額」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番欄に各記載の各価額にそれぞれ変更する。

3  平成三年(行ウ)第五号事件原告ら(同年(行ウ)第三号事件被告ら)の予備的請求の一のその余の部分をいずれも棄却する。

三  予備的請求の二について

1  平成三年(行ウ)第五号事件の予備的請求の二のうち、草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決につき、(別紙七)「被告らの請求する宅地、建築物及び借地権の価額」に各記載の各価額のとおり右裁決の変更を求める各訴えは、いずれも却下する。

2  平成三年(行ウ)第五号事件被告(同年(行ウ)第三号事件原告)は、同年(行ウ)第五号事件原告ら(同年(行ウ)第三号事件被告ら)に対し、(別紙二)「清算金」記載の金員及びこれに対する平成五年五月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  平成三年(行ウ)第五号事件原告ら(同年(行ウ)第三号事件被告ら)の予備的請求の二のその余の部分をいずれも棄却する。

第三  訴訟費用は、平成三年(行ウ)第三号事件、同年(行ウ)第五号事件を通じてこれを二分し、その一を平成三年(行ウ)第三号事件原告・同年(行ウ)第五号事件被告の、その余を平成三年(行ウ)第三号事件被告ら・同年(行ウ)第五号事件原告らの負担とする。

第四  この判決は、第二項三2に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

(略称)以下においては、平成三年(行ウ)第三号裁決変更請求事件を「甲事件」、同年(行ウ)第五号埼玉県収用委員会裁決変更等請求事件を「乙事件」、甲事件原告・乙事件被告を「原告」、甲事件被告・乙事件原告を「被告」と略称する。

第一  請求

一  甲事件

草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決中、(別紙三)記載の部分を(別紙四)記載のとおり変更する。

二  乙事件

1  主位的請求

(一) 草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決中、(別紙三)記載の部分を(別紙五)記載のとおり変更する。

(二) 原告は、被告らに対し、(別紙六)記載のとおりの金員及びこれらに対する昭和六三年一〇月一三日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

2  予備的請求の一

(一) 草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業の権利変換計画について埼玉県収用委員会が平成二年一二月五日付けでした裁決中、(別紙三)記載の部分を(別紙七)記載のとおり変更する。

(二) 原告は、被告らに対し、(別紙八)記載のとおりの金員及びこれらに対する昭和六三年一〇月一三日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

3  予備的請求の二

(一) 予備的請求の一第一項に同じ。

(二) 原告は、被告らに対し、(別紙八)記載のとおりの金員及びこれらに対する平成五年五月二四日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、原告が施行する草加都市計画草加駅東口第一種市街地再開発事業(以下、「本件事業」という。)における権利変換計画(以下、「本件権利変換計画」という。)に定められた被告らの従前資産の価額に関するものであり、これにつき埼玉県収用委員会(以下、「収用委員会」という。)が裁決した価額について、原告は、甲事件において、本件権利変換計画に定めた価額が正当であるとして裁決の変更を求め、これに対し、被告らは、乙事件において、主位的請求として、右裁決額は低額であり、また本件権利変換計画に記載されていない借地権が存在するとして、増額を内容とする裁決の変更を求めるとともに、原告主張額との差額について補償金の支払を求め、予備的請求の一として、右借地権の価額を除いて裁決額の変更を求めるとともに、原告の主張する額との差額について、補償金の支払を求め、予備的請求の二として、右借地権の価額を除いて裁決額の変更を求めるとともに、仮に右補償金の請求ができないとすれば、清算金として支払を求めた事案である。

二  基本的事実(当事者間に争いがない事実及び当事者が明らかに争わない事実以外は、認定の根拠とした証拠を掲記する。)

1  事実の経過

(一) 被告らは、本件事業の施行区域内に(別紙九)記載のとおり宅地、建築物又は借地権を有していた(以下、それぞれ「本件宅地」、「本件建築物」、「本件借地権」といい、各個別のそれについては、宅地は番地のみにより、例えば「本件四〇八番の一の宅地」と称し、建築物は、その家屋番号によって、例えば「本件四二一番三の建築物」と称する。本件宅地の位置関係の概略は、(別紙図面一)のとおりである。)。

なお、都市再開発法(以下、「法」という。)七三条一項三号に定める宅地、借地権又は建築物を「従前資産」といい、本件の従前資産の全てを合わせて「本件従前資産」といい、同条項三号の当該権利に対応して与えられる同条同項二号に定める施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等を「変換後資産」という。

(二) 原告は、本件事業につき法五一条に基づき昭和六二年七月九日に埼玉県(以下、「県」という。)知事による事業計画の認可を受け、昭和六三年五月三〇日から同年六月一二日までの間、本件権利変換計画を公衆の縦覧に供した。次いで、原告は、同年九月七日に本件権利変換計画につき法七二条に基づく右知事による認可を受け、同年九月一四日に本件権利変換計画を公告するとともに、同日付け書面によって被告らに対しこれを通知し、右通知はその頃被告らに到達した。なお、変更案の縦覧期間は平成四年一月二七日から同年二月九日までであった。

(三) 本件権利変換計画において、本件従前資産の価額は(別紙四)のとおり定められていたところ、被告らはこれらを不服として、右縦覧期間中に法八三条に基づき原告に対して意見書を提出したが、原告は、昭和六三年七月二一日、被告らに対し右意見書を採択しない旨通知した。

(四) そこで、被告らは、同年八月一八日、法八五条一項に基づき収用委員会に対して価額の裁決を申請したところ、収用委員会は、平成二年一二月五日付けで(別紙三)記載のとおり裁決し(以下、「本件裁決」という。)、右裁決書は、そのころ被告らに、また同月六日に原告に送達された。

(五) 施設建築物の建築工事は平成四年一月二九日に完了し、原告は、平成五年五月二四日、被告らの取得する変換後資産の価額を法一〇三条一項により(別紙一一)のとおり確定し、その旨被告らに通知した。

被告らは、これに対し、埼玉県に審査請求をした。

2  本件権利変換計画における本件従前資産の価額の算定の方法は、次のとおりである。

(一) 法八〇条一項によれば、従前資産の価額は、事業計画の決定の公告があった日から起算して三〇日を経過した日(以下、「評価基準日」という。ただし、右期間経過後六か月以内に権利変換計画の縦覧が開始されないときは、その六か月の期間が経過した日から起算して三〇日を経過した日を評価基準日とする。)における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額と定められている。

本件事業における評価基準日は当初昭和六二年八月二四日であったが、同日から六か月以内に本件権利変換計画の縦覧が開始されない見込みとなったため、結局昭和六三年三月二五日が評価基準日となった。

(二) 原告は、本件権利変換計画を定めるにあたって草加駅東口第一種市街地再開発事業権利変換基準及び同基準運用細則を制定し、さらに、従前資産の価額の算定基準として草加駅東口第一種市街地再開発事業宅地等評価基準(以下、「評価基準」という。)及び同基準実施細則(以下、「評価細則」という。)を制定した。

評価基準においては、宅地の価額は、地価公示価格、鑑定評価額、近傍類似の取引価格、その他一般の取引における価格形成上の諸要素を勘案して定めた標準宅地の価格を基準とし、路線価式評価法により算定し、建築物の評価は建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準により、借地権の存する宅地の所有権と借地権との権利割合又は権利価額は、権利者間の合意の申出により、右合意が成立しなかった場合は鑑定評価書等を参考として施行者が評価するものと定められ、また、評価細則において、宅地は、原則として画地すなわち一筆をその範囲とする宅地を単位として評価し、ただし、連続して所有者又は使用者を同じくし、かつ同一使用の目的に供されている二筆以上の宅地及び借地権の目的となっている宅地はその範囲をもって、一筆の中で複数の借地権の目的となっている宅地は当該借地権の範囲をもって、それぞれ一画地とみなすものと定められている(以下、このように複数筆の宅地又はその一部で構成された画地を「一体画地」、一体画地を構成する一筆の宅地又はその一部を「個別画地」という。また、そのうち本件従前資産に係るものについては、「本件一体画地」、「本件個別画地」と呼んで区別する。なお、本件一体画地の概略は、(別紙図面二)のとおりである。

(三) 原告は、評価細則にしたがって(別紙一二)のとおり一体画地を定めるとともに、(別紙一三)中「路線番号」欄記載のとおり本事業区域内に二一路線を定め、各路線ごとに間口八メートル奥行一五メートル面積一二〇平方メートルの標準画地を各一カ所宛想定し、以下のとおり不動産の鑑定を目的とする三社に対して右標準画地の鑑定評価を依頼し、その結果を基にして路線価を設定した(甲第八号証の一、二)。

(1) 原告は、右二一路線の各標準画地について、財団法人日本不動産研究所(以下、「日本不動産」という。)、株式会社吉野アプレイザル(以下、「吉野アプレイザル」という。)及び大和不動産鑑定株式会社(以下、「大和不動産」という。)に対し、その種別を商業地、類型を更地、評価基準日を昭和六二年八月二四日として正常価格の鑑定を依頼したところ、右各会社は、いずれも同年九月一〇日付けで原告に対し鑑定書を提出した。右鑑定の内容は、以下のとおりである。

① 日本不動産の鑑定結果(甲第五号証の一)

日本不動産は、各路線の標準宅地について、価格水準が類似すると判断した品等ごとに、駅前の一部と駅前通り沿いの地域(路線番号第一、第三、第八番)、巾員五メートルないし六メートルの舗装市道沿いの地域(路線番号第二、第六、第七、第一三、第一六、第一七番)及び巾員2メートルないし3.5メートルの裏通り沿いの地域(路線番号第四、第五、第九、第一〇ないし第一二、第一四、第一五、第一八ないし第二一番)の三グループに分け、各グループの代表となる宅地として順に路線番号第八番、第一七番、第四番の標準宅地を選定した。

次に、右各代表宅地について、取引事例比較法により求めた価格を主とし、公示価格を規準とした価格及び収益還元法により求めた価格を考慮して、その価格を右の順に一平方メートル当たり(以下、いずれも一平方メートル当たりの単価である。)一六五万円、一〇〇万円、五八万円とそれぞれ査定した。

そして、右代表宅地と各路線の標準宅地につき、駅への近接性、街路条件(道路巾員、系統・連続性)、地域の商況、用途の多様性等の各要因を比較して、各路線の標準宅地の価額を(別紙一三)中「日本不動産」欄記載のとおり算定した。

② 吉野アプレイザルの鑑定結果(甲第六号証の一)

吉野アプレイザルは、各路線の標準宅地について、価格形成要因の見地から目抜き通り沿いの商業地域(路線番号第三及び第八番)、商業地域(路線番号第一、第二、第六、第七、第一三、第一六、第一七番)及び商業移行地域(路線番号第四、第五、第九ないし第一二、第一四、第一五、第一八ないし第二一番)の三グループに分け、各グループの代表となる宅地として、順に路線番号第八番の標準宅地付近に所在する幅員約一二メートル舗装県道草加停車場線に接面した地積一二〇平方メートルの中間画地、路線番号第一六番の標準宅地付近に所在する幅員約五メートル舗装市道に接面した地積一二〇平方メートルの中間画地、路線番号第一八番の標準宅地付近に所在する幅員約三メートル舗装市道に接面した地積一二〇平方メートルの中間画地をそれぞれ想定した。

次に、右各代表宅地について、取引事例比較法により求めた価格を主として、公示価格を規準とした価格及び収益還元法により求めた価格を考慮して、その価格を、それぞれ一五三万円、九九万円、五三万五〇〇〇円と査定した。

そして、右代表宅地と各路線の標準宅地につき、駅への近接性、道路条件、環境条件(繁華性、店舗の質、構造)等の各要因を比較することによって各路線の標準宅地の価額を(別紙一三)中「吉野アプレイザル」欄記載のとおり算定した。

③ 大和不動産の鑑定結果(甲第七号証)

大和不動産は、各路線の標準宅地について、接面道路の性格・繁華性等によって、五メートル以上の道路に接面し顧客の通行量が多く店舗が連坦し繁華性が高い商業地(路線番号第一ないし第三、第六ないし第八、第一三、第一六、第一七番)、四メートル未満の道路に接面し、顧客の通行量が比較的少なく、店舗・住宅等が混在し、繁華性が低い地域(路線番号第四、第五番、第九ないし第一二、第一四、第一五、第一八ないし第二一番)の二グループに分け、各グループの代表となる宅地を、前者につき路線番号第一番の、後者につき路線番号第一四番の各標準宅地と定めた。

次に、右各代表宅地について、取引事例比較法により求めた価格を中心に、公示価格を規準とした価格及び収益還元法により求めた価格を考慮して、その価格をそれぞれ一三四万円、五六万九〇〇〇円と査定した。

そして、右代表宅地と各路線の標準宅地について、駅への近接性、道路条件、繁華性、通行量、公法規制の各要因を比較することによって各路線の標準宅地の価額を(別紙一三)中「大和不動産」欄記載のとおり算定した。

(2) 原告は、右鑑定結果の各数値を単純平均して(別紙一三)中「上記三鑑定の平均」欄記載のとおり各路線価を決定した。

(3) その後、前記のように評価基準日が昭和六三年三月二五日に変更されたため、原告は、日本不動産及び吉野アプレイザルに昭和六二年八月二四日から昭和六三年三月二五日までの間の土地価格の変動率の調査を依頼したところ、これを前者は二〇パーセント、後者は一八パーセントと査定したので、原告はこれらを平均した一九パーセントをもって右期間の変動率とし、右期間中に右割合で価格が増加したものとして、右各路線価を修正した。

(4) 原告は、右各路線価を基準とし、これに評価細則に定める各種補正を加えて各一体画地の一平方メートル当たりの更地評価額(百円未満切り捨て。)を(別紙一四)中「一体画地の一平方メートル当たりの更地価額」欄記載のとおり算出した。

(5) そして、右評価額に本件個別画地の評価地積を乗じて本件個別画地の更地価額を算出し、これに各一体画地ごとに算出した底地割合又は借地権割合を乗じて本件個別画地の底地価格又は借地権の価格を(別紙一四)中「個別画地の底地価額」欄記載のとおり算出し、もって本件宅地等の価額を決定した。なお、右借地権割合については、日本不動産に個別に調査を依頼し、右調査結果に基づき(別紙一四)中「借地権割合」欄記載のとおり決定した(甲第一五及び第一六号証)。

(6) 本件各建築物の価額については、吉野アプレイザルに対して各建築物ごとに移転補償金額の算定を依頼し、(別紙一四)中「建築物の価額」欄記載のとおり決定した。

3  本件裁決における本件従前資産の価額の算定の方法は、次のとおりである。

収用委員会は、本件裁決に当たり、株式会社川名不動産鑑定事務所(以下、同会社を「川名不動産」、同会社による鑑定を「川名鑑定」という。)及び大手町不動産鑑定株式会社(以下、同会社を「大手町不動産」、同会社による鑑定を「大手町鑑定」という。)に対し、本件従前資産について価格時点を昭和六三年三月二五日として正常価格の鑑定を命じた。

(一) 川名不動産の鑑定結果(甲第一〇号証)

川名不動産は、平成二年八月九日、次のとおり鑑定を行った。

土地の利用状況に鑑み、本件各一体画地の属する近隣地域を(別紙一五)中「近隣地域」欄記載のとおりA、B、Cの三近隣地域に区分し、A近隣地域は県道草加停車線の沿道地域、B近隣地域はA近隣地域のやや草加駅寄りを南北に走る幅員約六メートルの市道の沿道地域、C近隣地域はA近隣地域の北側背後地のうち道路の幅員が二ないし三メートルの狭隘なものに接面した地域とし、各近隣地域のほぼ中央に、A近隣地域においては南側が幅員約一二メートルの舗装道路に、B近隣地域においては東側が幅員約六メートルの舗装道路に、C近隣地域においては東側が幅員約二メートルの舗装道路にそれぞれ接面する各間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートルの一個の標準画地を想定した。そして、A近隣地域の標準画地につき、比準価格、収益価格、地価公示価格を試算評価して、右近隣地域の標準画地の標準価格を一平方メートル当たり二三〇万円と決定し、次に右価格を基礎として、A近隣地域とB近隣地域の地域要因の比較からB近隣地域の標準画地の標準価格を一平方メートル当たり一四三万八〇〇〇円と決定し、更にこのようにして得られたB近隣地域の標準画地の標準価格を基礎として、B近隣地域とC近隣地域の地域要因の比較からC近隣地域の標準画地の標準価格一平方メートル当たり七九万九〇〇〇円と決定した。そして、これら各標準画地の標準価格を基礎とし、右各標準画地と本件一体画地の個別要因を比較して本件一体画地の一平方メートル当たりの更地価格を(別紙一五)中「一体画地の一平方メートル当たりの更地価額」欄のとおり評定し、これに本件個別画地の地積を乗じて本件個別画地の更地価格を算出した。次いで、本件一体画地ごとに借地権又は使用借権の割合を(別紙一五)中「借地権又は使用借権の割合」欄のとおり査定し、右割合と本件個別画地の更地価格とから本件個別画地の底地価額又は借地権の各価額を(別紙一五)中「個別画地の底地価額」欄のとおり算出した。

また、本件建築物については、それぞれについて価格時点における再調達原価を求め、次いで減価修正を行って(別紙一五)中「建築物の価額」欄記載のとおり各鑑定評価額を決定した。

(二) 大手町不動産の鑑定結果(乙第一号証)

大手町不動産は、平成二年六月二六日次のとおり鑑定を行った。

まず、価格形成の要因に鑑み、本件各一体画地の属する近隣地域を(別紙一六)の「近隣地域」欄記載のとおりA近隣地域(県道草加停車場線の沿道地域)、B近隣地域(高砂二丁目九番街区の東側を南北に走行する市道三〇一四八号線の沿道地域)及びC近隣地域(県道草加停車場線の北側背後の地域)に区分し、そして、A近隣地域につき、比準価格、収益価格を試算し、更に地価公示価格との規準を行い、右近隣地域の更地の標準価格を一平方メートル当たり二四二万円と決定し、右価格を基礎として、A近隣地域とB近隣地域の地域要因の比較からB近隣地域の更地の標準価格を一平方メートル当たり一六七万円と決定した。次にA近隣地域の標準価格を基礎として、A近隣地域とC近隣地域の地域要因の比較からC近隣地域の更地の標準価格一平方メートル当たり九六万八〇〇〇円と決定した。そして、右各標準価格を基礎としてこれと本件一体画地の個別要因の比較から本件一体画地の一平方メートル当たりの更地価格を(別紙一六)中「一体画地の一平方メートル当たりの更地価額」欄記載のとおり算定し、さらに右価格を基礎として本件一体画地とこれに帰属する本件個別画地の個別要因を比較し、本件個別画地が一体化することによる評価差額が認められる場合にはその差額を本件個別画地に配分することによって、その価格を(別紙一六)中「本件個別画地の更地価額」欄記載のとおり算出した。次に、本件一体画地にかかる借地権又は使用借権の割合を(別紙一六)中「借地権又は使用借権の割合」欄記載のとおり査定し、これに基づいて本件個別画地の底地価額又は借地権の各価額を(別紙一六)中「個別画地の底地価額」欄記載のとおり算出して、本件宅地及び借地権の各価額を決定した。

また、本件建築物については、それぞれについて価格時点における再調達原価を求め、次いで減価修正を行って(別紙一六)中「建築物の価額」欄記載のとおり各建築物の鑑定評価額を決定した。

(三) 収用委員会は、昭和六三年三月二五日前後の本件一体画地の地域の地価の動向及び近傍類似の土地の取引価格、収用委員会の現地調査の結果、川名鑑定及び大手町鑑定、当事者が提出した鑑定書等を考慮し、本件従前資産の裁決額を(別紙三)のとおり決定した。なお、本件従前資産である本件四〇八番一の宅地、本件四二〇番二の宅地、本件四二三番一の宅地、本件四三三番一の三の建築物の価額については、収用委員会が相当と判断した価額が、いずれも原告の申立にかかる本件権利変換計画において定められた価額を超えず、また、本件四三二番二の建築物及び本件四三二番三の建築物の価額については、収用委員会が相当と判断した価額が、いずれも被告らが本件裁決の審理において申し立てた価額を超えるので、法八五条三項が準用する土地収用法九四条八項の規定により、前者については本件権利変換計画において定められた価額をもって、後者については、被告らが主張した価額をもって裁決価額とした(甲第一号証の一)。

三  争点

1  本件従前資産の価額を算定するにあたり、本件権利変換計画に記載されていない被告ら主張の借地権の価額を考慮すべきであるかどうか(乙事件について)。

2  評価基準日である昭和六三年三月二五日当時の本件従前資産の価額(甲・乙事件について)。

3  原告の補償金(予備的請求の一)ないし清算金(予備的請求の二)支払義務の有無。その過怠金ないし遅延損害金の起算日及び利率(乙事件について)。

四  争点についての当事者の主張

1  争点1について

(一) 被告らの主張

被告A、同E、同F及び同Gは、本件権利変換計画に定められた従前資産のほかに、(別紙一〇)のとおり借地権を有していたから、これらの権利の価額も本件従前資産の価額の内容となる。

(二) 原告の反論

法七三条四項が「宅地又は建築物に関する権利に関して争いがある場合において、その権利の存否又は帰属が確定しないときは、当該権利が存するものとして、又は、当該権利が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めなければならない。」と規定した趣旨は、施行者は従前資産となる宅地、借地権等についてはその名義人を権利者として権利変換計画を定めることとし、その権利関係の確定は、施行者においてはこれに関与せず、権利変換計画とは別に契約当事者間の解決に委ねることとしたものである。本件は当事者間に権利に関して争いがある場合ではないから同項は適用されないが、借地権の価額ではなくその存否について判断を求めるという点では同様であるから、同項の趣旨に鑑みれば、仮に権利変換計画に定められていない借地権が存在したのであれば、権利変換計画外でその調整を図るべきものである。なお、仮に本件権利変換計画に記載されていない借地権について、その借地権の価額が零と評価されたと解する余地があったとしても、被告らは、法八五条一項により提出した前記意見書において右借地権の価額については何ら主張をしていないから、右借地権の価額について裁決を申請することはできず、したがって、本件訴訟においてこれを争うことも許されない。

2  争点2について

(一) 原告の主張

本件従前資産の価額は、本件権利変換計画において定められたように(別紙四)のとおりである。

(1) 従前価額を評価する目的

都市再開発事業において変換後資産を取得する者に対して従前資産価額を算定する目的は、権利変換処分によって与えられる施設建築物等を各権利者に公平に配分するための基準とすることにある。そこで、特定の従前資産の価額が施行区域内の従前資産全体に占める割合が正当であれば、変換後資産を公平に配分することができ、したがって右価額は右のような基準として必要かつ十分な役割を達成するから、当該従前資産の評価は妥当なものである。しかし、全体に占める割合という観点を無視し、特定の従前資産の価額を個別的に評価すれば、かえって大きな不公平が生じる。ところが、本件裁決は、このような観点を無視し、施行区域内の他の権利者の従前資産の評価と切り離して被告らの従前資産の評価を行っているため、他の権利者との関係で不公平な結果となっている。なお、権利変換の申出をしない等のため権利変換計画において変換後資産を与えられない者は、権利変換期日において当然権利を失い、正当な補償金が支払われるべきであるから、この場合における従前資産の価額の算定は、このような補償金額を算定するためであって、変換後資産を取得する者についての場合とは従前資産価額を算定する目的が異なるものである。

(2) 本件宅地の更地価額

本件権利変換計画において定めた従前資産の価額は適正である。

① 路線価決定について

原告は、日本不動産、吉野アプレイザル及び大和不動産による各鑑定の結果を単純平均して路線価を算定したが、右方法は最も公正であって、不当な点はない。

② 評価細則の適用について

都市再開発事業においては土地の最有効利用を図ることが最大の目的であり、また、都市部においては借地権の価額がその底地の価格よりもはるかに大きいのであるから、使用関係を重視し、同一の使用の目的に供されている数筆の土地は一体的に評価するのが合理的である。よって、評価細則の内容は不当ではない。

本件四一九番一の宅地、本件四二〇番二の宅地及び本件四三二番二の宅地の使用関係は、次のとおりであり、原告は、これらの使用関係にしたがって本件一体画地を定めたものであるから、本件一体画地を定めるについて不当な点はない。

ア 本件四一九番一の宅地のうち26.71平方メートルの部分、及び本件四二〇番二の宅地のうち20.45平方メートルの部分は、本件四一九番四の宅地とともに、田口春夫が建物所有の目的で一体的に使用していた。

イ 本件四一九番一の宅地のうち67.05平方メートルの部分と本件四二〇番二の宅地のうち12.28平方メートルの部分は、南原正男が建物所有の目的で一体的に使用していた。

ウ 本件四一九番一の宅地のうち59.04平方メートルの部分は西川清が、同土地のうち99.17平方メートルの部分は鈴木勇三郎が、それぞれ建物所有の目的で使用していた。

エ 本件四一九番一の宅地のうち25.43平方メートルの部分は、駐輪場として使用されていた本件四二〇番二の宅地のうち97.40平方メートルの部分と接続し、被告株式会社和泉商会が通り抜けの通路として使用していた。

オ 本件四三二番二の宅地及び本件四三三番三の宅地のうち19.37平方メートルの部分は、被告E、同F、同株式会社Hが建物所有の目的で一体的に使用していた。

③ 時点修正について

ア 従前資産の価額は評価基準日から六か月以内に具体的に決定し権利変換計画書に記載することとされているため、評価基準日に近い過去の取引事例を調査して評価を行うにつき、評価基準日までの地価変動率を必ずしも精確に把握できないという制約がある。しかも、本件において調査の対象となった昭和六二年八月二四日から昭和六三年三月二五日までの期間は、未曾有の地価変動期であったので、地価変動率を正確に把握することは非常に困難な状況にあった。そこで、このような場合には、数年後に評価基準日以後の取引事例までも参照し大幅な地価変動率を適用して従前資産の評価額を算定することは、不当である。日本不動産及び吉野アプレイザルが行った各鑑定は、このような特殊事情の下において、調査時点において収集可能な資料に基づきできる限り正確に時点修正率を算定したものであるから、妥当なものである。

イ また、仮に時点修正率が実際の地価変動率よりも低く、それにより評価基準日における従前資産の価額が当時の世間相場より低くなったとしても、従前資産に応じて変換後資産を与えられた者はそれによって不利益を受けることはない。なぜなら、法七六条三項において、一の施設建築敷地について二人以上の宅地の所有者が所有権を与えられるときは、当該施設建築施設は、各宅地の価額に応ずる割合によりこれらの者の共有に属するものと定められているように、各従前資産の価値が施行区域内の従前資産全体のうちに占める割合が正当であれば、権利者はその従前資産の価値に見合う変換後資産を取得することができ、その変換後資産の地価変動による増減をそのまま取得することになるからである。むしろ、清算が終了した後、収用委員会に対して価額の裁決を申請した者についてのみ、権利変換計画に定められた従前資産の価額が世間相場に比して低かったとして、その額を変更し清算金を支払うことになれば、他の権利者との関係で著しい不公平が生じる。

④ 先行買収地について

原告は、本件宅地以外の土地を不当に有利に評価したことはない。後記のように被告らの指摘する原告所有の宅地はいずれも道路用地として先行買収したものであり、本件権利変換計画において、その価額は、評価細則において、「先行買収されたことにより当初の画地が分割された場合の評価は、当初の画地による評価とし、その一平方メートル当たりの評価額に残画地面積を乗じて算出するものとする。」と定められているところに従って算定されたものである。

ア 草加市高砂二丁目四二二番二(以下、本件事業区域内の土地等については、番地のみで表示する。)及び四二三番三の各宅地は、従前野口松太郎が所有し、四二三番二の宅地とともに一体的に使用していたところ、原告は四二二番二及び四二三番三の宅地を先行買収したので、残画地の評価額を査定するため右三筆を一体画地として評価した。

イ 四二九番八及び四二九番一の宅地は、従前ミナミ自動車株式会社が所有し、同会社が中村光一所有の四二六番一、四二六番五、四二六番六、四二九番七及び四二九番六の宅地とともに一体的に使用していたものであり、原告は四二九番八、四二九番一の宅地を先行買収したので、残画地の評価額を査定するため右七筆を一体画地として評価した。

ウ 四〇九番五の宅地は、従前浜野重松が所有し、被告Aほか五名所有の四〇八番一の宅地とともに一体的に使用していたものであり、原告は四〇九番五の宅地を先行買収したので、残画地の評価額を査定するため右二筆を一体画地として評価した。

エ 四〇六番一〇の宅地は、従前染谷勝之が所有し、同人所有の四〇六番四、四〇六番五及び四〇七番三の宅地とともに一体的に使用していたものであり、原告は四〇六番一〇の宅地を先行買収したので、残画地の評価額を査定するため右四筆を一体画地として評価した。

オ 四〇六番一一の宅地は、従前橘達雄が所有し、同人所有の四〇六番六の宅地とともに一体的に使用していたものであり、原告は四〇六番一一の宅地を先行買収したので、残画地の評価額を査定するため右二筆を一体画地として評価した。

⑤ 川名鑑定の不当性

同鑑定においては、A、B、C各近隣地域の地域要因を比較する際、B及びC近隣地域の減価の程度を低く評価したため、これら近隣地域の標準画地の更地価格は実際に比べ不当に高くなった。その理由は、川名鑑定が行われた時点において、各画地上の建物は本件四二一番三の建築物を除き全て取り壊され、各画地は一面の更地状態になっていたので、川名鑑定は往時の写真や図面をもとに街路条件、環境条件等を評価したために実際の条件の劣悪さを的確に把握できなかったことにある。

⑥ 大手町鑑定の不当性

同鑑定においても、川名鑑定の場合と同様に、鑑定の行われた当時において各画地上の建物は本件四二一番三の建築物を除き全て取り壊され、各画地は一面の更地になっていたので、往時の写真や図面をもとに街路条件、環境条件等を評価しなければならず、実際の条件の悪さを的確に把握できなかった。そのうえ、大手町鑑定においては、地積過小の宅地、形状・間口・奥行において不利な宅地、無道路地等本来相当の減価を必要とする物件について、将来一体開発がなされる蓋然性が高いことを理由に、減価の程度を通常よりも低くしている(この点は、本件一体画地とそれに属する本件個別画地を比較する際の指針として明示されているが、A、B、C各近隣地域の地域要因を比較するにあたっても同様の考え方に基づいてなされたものと推察できる。)。しかし、従前資産の評価は、再開発事業による開発利益を考慮せずになすべきものであるから、再開発事業により一体開発がなされる蓋然性が高いとしても、それによって地域要因の減価の程度を低くしてはならないのであり、右鑑定の結果は不当である。

(3) 借地権割合

① 本件借地権割合に関する日本不動産の鑑定は正当であり、原告はこれに基づいて借地権割合を決定した。

② 川名鑑定においては、類似地域における底地の取引事例、相続税路線価図及び世評を勘案しており、そのうち相続税路線価図の借地権割合は六〇パーセントであるとしているが、昭和六三年度の相続税路線価図によれば、A近隣地域の借地権割合は七〇パーセントであるから、川名鑑定は相続税路線価図の借地権割合の数値を取り間違えた可能性がある。

③ 大手町鑑定においては、県内の他の再開発事業において採用された借地権割合を勘案して判断しているが、参考にされた事業はいずれも特殊なもの(例えば、谷塚駅東口の再開発事業は、組合施行の事例であり、権利者の総計は二二名に過ぎず、権利変換手続は組合員全員の合意に基づいて行われ、民間開発業者が参加組合員として加入している。)であり、本件事業にそのまま適用することはできないから、やはり適切でない。

(4) 本件建築物の価額

吉野アプレイザルは、本件建築物を実際に調査してその価額を査定し、原告はこれに基づき本件建築物の価額を決定した。

しかし、川名鑑定及び大手町鑑定がなされた当時、本件四二一番三の建築物を除く全ての建築物は取り壊されていたため、建物の現況を内外から精査することが不可能であった。したがって、この精査を経ずしてなされた川名鑑定及び大手町鑑定の結果は信用性が低い。

(二) 被告らの主張

本件従前資産には、本件権利変換計画に定められなかった前記借地権も含まれるから、被告らは、主位的に、本件従前資産の価額を(別紙五)のとおり主張し、予備的に、右借地権が含まれないものとして、本件従前資産の価額を(別紙七)のとおり主張する。

(1) 従前価額を評価する目的について

法八〇条一項は、法七三条一項三号、一一号又は一二号の価額は、法七一条一項又は五項の規定による三〇日の期間を通過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価額等を考慮して定める相当の価額とすると定めている。このように、法は、変換後資産を取得するかしないかを問わず、同一の算定基準を定めており、また、従前資産の価額は、取引価格等を基にした正当な価額で算定すべきものである。そして、特定の従前資産の価額が施行区域内の従前資産全体に占める割合が正しければ従前資産の額が正当な価額より低くてもよいとの原告の主張は、法八五条一項において、権利者が収用委員会に対し従前資産の価額の裁決を申請することができると定められたことと矛盾するものである。

(2) 本件宅地の更地価額

① 大手町鑑定が適正であり、したがって、本件宅地の更地価額はこれによるべきである。

ア 評価基準五条二項では、宅地の価額を評価するに当たりその宅地に建築物等があるときは当該物件がないものとして評価する旨規定しているから、大手町鑑定が行われた当時には、各画地上にあった建物が取り壊されていたとしても、的確な評価をするのに何ら支障はなかったといえる。

イ 大手町鑑定は、あくまでも評価基準日における近傍類似の土地の取引価格等を考慮して本件従前資産の価額評価を行ったものであり、本件事業が終了した場合の価値の増加をそのまま反映したものではない。もしそうであれば、本件事業の施行区域内の宅地は全て一体評価されてしまうはずである。また、原告のいう開発利益の意味するところが、再開発事業が計画されたことによる土地の取引価格の上昇にあるとすれば、それは単に合理的市場における取引価額が上昇したものにすぎないから、本件宅地の価額を算定するに当たりこれを考慮することは不当なことではない。

② 本件権利変換計画における本件従前資産の価額の算定は、次のとおり不当である。

ア 評価細則の内容及びその適用の不当性

数筆の宅地を一体画地として評価する要件について、評価細則2(2)は、「連続して所有者又は使用者を同じくし、かつ、同一使用の目的に供されている二筆以上の宅地及び借地権の目的となっている宅地」と定めているが、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」に基づいて制定された「公共用地の取得に伴う損失補償基準」の細則である「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」においては、「連続して所有者及び使用者を同じくし、かつ、同一使用の目的に供されている二筆以上の土地並に借地権の目的となっている土地」と規定されている。したがって、右損失補償基準細則によれば、所有者及び使用者を同じくしなければ一体画地とみなされないのに、評価細則によれば、所有者又は使用者の一方が同じであれば一体画地とみなされることとなるから、不当である。

仮に評価細則が適用されるとすれば、本件四一九番一の宅地、本件四二〇番二の宅地及び本件四三二番二の宅地は、いずれも同一使用の目的に供されていたから、実施細則の定める右要件に該当し一体画地として評価されるべきであるのに、個別に評価されたため、不当に低い評価となった。

イ 路線価決定の不当性

原告は、日本不動産、吉野アプレイザル及び大和不動産による鑑定の結果に基づき各路線価を求めるに当たり、これら鑑定の結果をそのまま単純に平均した。しかし、本件宅地に関係する路線番号第一五、第一七、第一九、第二〇、第二一番については、右三鑑定の評価額の上下開差は平均約一一パーセントもあり、特に路線番号第一七、第一九、第二一番の各路線については、それぞれ12.0パーセント、15.0パーセント、19.3パーセントもの開差がある。右数値は、第一五、第一七、第一九、第二〇、第二一番以外の一六路線における右三鑑定の評価の平均開差が約7.8パーセントであることと比較しても、非常に高い数値であることが明白である。このように開差が大きい場合には、各鑑定の内容を十分に吟味した上で最も妥当と思われる数値を採用すべきであって、単純に平均値によるべきではない。

ウ 時点修正の不当性

原告は、昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの時点修正率を約一九パーセントと査定して各路線価を修正したが、右期間は草加市内の商業地の価額が急騰した時期であり、右修正率は不当に低く査定したものである。すなわち、国土庁土地鑑定委員会編「地価公示」によれば、草加市内の商業地の公示地価格は、昭和六三年一月一日において前年より141.6パーセント上昇し、同六四年一月一日において前年より11.6パーセント上昇している。また、国土庁土地局の調査によれば、草加市内の商業地の基準地価格の昭和六三年七月一日における対前年変動率は64.8パーセントである。

エ 原告の査定の恣意性

原告は、自らの所有する宅地については不当に高く査定しており、このことは、原告の評価が極めて恣意性の強い不当なものであることを示唆している。すなわち、原告所有地である四二二番二及び四二三番三の宅地は、路線価七三万円(時点修正後のもの。以下同じ。)の私道に接面している中間画地であるにもかかわらず、草加駅東口駅前通りの路線価二一一万八〇〇〇円を基準としてこれに路線価七三万円を側方加算して一平方メートル当たりの更地価額を決定した。また原告所有の四二九番八、四二九番一、四〇九番五、四〇六番一〇及び四〇六番一一の宅地はいずれも無道路地で減価補正されるべきであるのに、右補正をしないまま一平方メートル当たりの更地価額を決定した。

(3) 借地権割合

本件借地権割合に関する大手町不動産の鑑定は正当であり、したがって、これによって本件借地権割合を決定すべきである。

(4) 本件建築物の価額について

本件建築物に関する大手町不動産の鑑定は正当であり、したがって、これによって本件建築物の価額を決定すべきである。

3  争点3について

(一) 被告らの主張

(1) 補償金

① 法九一条は、補償金を与えられる者を権利変換を希望しない旨の申出をした者に限定したものではない。従前資産の価額に不満があって収用委員会にまでその価額の不服の申立てをした者は、当初から権利変換を希望しない者に準じて考えるべきであるから、これらの者については、法九一条を類推適用すべきであり、被告らの主張する従前資産の価額と本件権利変換計画において定められた従前資産の価額との差額は補償金として支払われるべきである。

法八五条四項は、同条二項と同じく裁決の申請や裁決の結果により事業が停滞することがないように配慮した規定であって、法七三条一項三号に規定するものが清算金か補償金かまでは定めていない。また法八五条四項の価額についての裁決は、法七三条一項三号の価額につき不服のある場合と、法九一条の補償金等の価額に不服がある場合とを併せて規定し、両者とも法八五条三項により土地収用法の規定が準用されているから、両者は同等に扱われているのであって、前者が清算金であり、後者が補償金であると解すべき根拠はない。

② 従前の資産の所有権は権利変換期日に失われるのであるから、確定した差額である補償金は、従前の権利を失った権利変換期日に遡って支払われるべきである。

③ したがって、被告らは、原告に対し、補償金として、主位的に、本件権利変換計画に定められなかった借地権の価額を含めた被告ら主張の従前資産の価額と本件権利変換計画に定められた価額との差額である(別紙六)記載の金額及びこれに対する昭和六三年一〇月一三日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による過怠金の支払を、予備的に右借地権の価額を含めない被告ら主張の従前資産の価額と本件権利変換計画に定められた価額との差額である(別紙八)記載の金額及びこれに対する昭和六三年一〇月一三日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による過怠金の支払を求める。

(2) 清算金

① 仮に法九一条が本件に類推適用されないとしても、被告らの主張する従前資産の価額と原告が法一〇三条一項により確定した価額との差額について、原告は法一〇四条により被告らに対し清算金を支払う義務がある。

② また、右清算金支払については法一〇六条三項に定める清算金徴収に関する規定が準用される。

③ したがって、被告らは、原告に対し、予備的に、清算金として、本件権利変換計画に定められなかった借地権の価額を含めない被告ら主張の従前資産の価額と本件権利変換計画に定められた価額との差額である(別紙八)記載の金額及びこれに対する平成五年五月二四日から支払済みまで右同項所定の年14.5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 原告の反論

(1) 補償金について

法九一条が施行区域内に従前資産を有する者で、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して変換後資産を与えられない者に関する規定であることは文理上明らかであり、被告らは変換後資産を取得しており、これに当たらないから、同条が適用されるべき場合ではない。

(2) 清算金について

① 法一〇四条により権利者に清算金支払請求権が発生するのは、従前資産の価額と変換後資産の価額の双方が確定した時点であるから、本件のように従前資産の価額に争いがあり法八五条三項に定める訴えが提起された場合は、その裁判が確定するまで右請求権は発生しない。

② 施行者が清算金を支払う場合には、法一〇六条の規定は準用されない。

第三  争点に対する判断

一  争点1について

1  先ず、争点1は、乙事件の主位的請求に関するものであるところ、右請求のうち、(別紙五)の「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1宅地」の5番から7番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の4番から6番、「三被告Cに係る宅地の価額」の4番から6番、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「1 借地権」の1番及び2番についての各訴えは、被告らの請求額が特定されず、また、(別紙五)の「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「3 建築物」、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「2 建築物」についての各訴えは、右被告らの請求額と本件裁決における価額が同一であるから、訴えの利益を欠き、不適法である。

2  そこで、乙事件の主位的請求のうち、右不適法な部分以外の関係で、以下において、争点1について判断する。

法によれば、施行者は権利変換計画を二週間公衆の縦覧に供しなければならず、施行区域内に土地又は土地に定着する物件に関し権利を有する者は、縦覧期間内に意見書を提出することができ、右意見書が提出された場合、施行者は右意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは、権利変換計画に必要な修正を加え、右意見を採択すべきでないと認めるときは、その旨を意見書を提出した者に通知するものとされている(八三条)。

そして、右意見書が採択されなかった場合において、その意見が法七三条一項三号、一一号又は一二号の価額に関するものであるときは、右意見書を提出した者は、その通知を受けた日から三〇日以内に収用委員会にその価額の裁決を申請することができ(法八五条一項)、その裁決に不服があるときは、右申請人又は施行者は、右裁決の変更を求める訴訟を提起できるが(同条三項、土地収用法一三三条)、右裁決及び右訴訟による裁判は権利変換計画で定められた施設建築敷地の共有持分等には影響を及ぼさないものとされている(法八五条四項)。このように、従前資産の価額に関する争いは、権利変換処分そのものの適否とは別に扱われ、従前資産の評価を先ず公正な評価機関である収用委員会に委ね、その裁決に不服がある場合は、施行者と裁決申請者の間における訴訟において決定すべきものとされている。

しかし、権利変換計画における権利或いはその変換計画に関して意見書が提出された場合は、施行者において、これを審査し、その意見を採択すべきであると認めるときは、権利変換計画に必要な修正を加えるけれども、採択すべきでないと認めるときは、これに修正を加えず、右権利変換計画に従った権利変換処分がなされることとなる。そして、宅地又は建築物に関する権利に関して争いがある場合は、借地権以外の宅地の使用又は収益の権利を除き、施行者は、当該権利が存するものとして、又は当該権利が現在の名義人に属するものとして権利変換計画を定めるものとされている(法七三条四項)。このように、法は、権利変換計画が定められた段階で直ちに権利の存否を確定することを予定していないのであって、仮に権利変換計画における自己の権利に関する部分に不満がある場合においても、これを対象とする訴訟は許されず、その後権利変換処分がなされた段階で、なお不満がある時に、右権利変換処分に対する行政訴訟を提起することが可能となるものである。

以上のとおり、権利変換計画に不満がある場合においても、その対象が従前資産の価額に関するか、それとも権利ないし権利変換計画に関するかによって、これを争いうる法的手続は別個のものとされており、従前資産の価額の裁決を求められた収用委員会は、その対象である宅地や建築物等を巡る権利関係までも決定する権限を有しない。それ故、当事者は、収用委員会の右価額に関する裁決の変更等を求める訴訟において、権利の存否を問題とすることは許されないと解される。

したがって、権利変換計画に記載されていない借地権の存在を主張し、その価額の認定を求める被告らの主張は、借地権の存否について判断をするまでもなく、主張自体失当であって、採用することができない。

二  争点2について

1  従前資産を評価する目的について

法八〇条一項は、法七三条一項三号、一一号又は一二号の価額は、法七一条一項又は五項の規定による三〇日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とすると定めている。また、法七七条二項、一項は、法七一条一項の申出をした者を除き、施行区域内に借地権を有する者及び施行地区域内の土地に権原に基づき建築物を所有する者に対して与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならないと定め、法一〇四条は、法一〇三条一項の規定により確定した施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等の価額とこれを与えられた者がこれに対応する権利として有していた施行地区内の宅地、借地権又は建築物の価額とに差額があるときは、施行者は、その差額に相当する金額を徴収し、又は交付しなければならないと定めている。このように、従前資産の価額は、権利変換処分によって変換後資産を取得する場合には、権利変換処分の前後における各資産の価値を把握比較し、従前資産と変換後資産の均衡を判断しあるいは清算金を決定する要素であり、権利変換を希望しない場合には、補償金を決定する要素と成るものであるが、法は、従前資産の価額は、右のとおり、近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額としており、右二つの場合について従前資産の価額の算定方法を別異に定めていない。したがって、従前資産の価額の意義は、権利変換処分後に変換後資産を取得する場合とそうでない場合において、基本的に異なるものではない。

2  評価細則に則った一体画地の適否について

(一) 評価細則は、前記のとおり、連続して所有者又は使用者を同じくし、かつ同一使用の目的に供されている二筆以上の宅地及び借地権の目的となっている宅地はその範囲をもって、一筆の中で複数の借地権の目的となっている宅地は当該借地権の範囲をもって、それぞれ一画地とみなす旨定めており、その趣旨は、土地の所有関係だけでなく使用関係をも考慮して宅地評価の範囲を定めようとするものである。そして、従前資産の価額は、前記のように或る時点における取引価格等を考慮して定める相当の価額であるところ、ここにいう取引価格は現在の使用状況を前提として行われる取引において形成される価格をいうと解され、しかも使用状況は、取引価格の形成に大きな影響を与えるから、宅地を評価するに当たり、使用範囲を考慮してその範囲を画することには、合理性があるということができる。したがって、評価細則の右のような評価の方法は、不当とはいえない。

(二) 乙第四号証及び弁論の全趣旨によれば、本件四一九番一、本件四二〇番二及び本件四三二番二の宅地の使用関係は、次のとおりであったと認められる。

(1) 本件四一九番一の宅地のうち26.71平方メートルの部分は、本件四一九番四の宅地及び本件四二〇番二の宅地のうち20.45平方メートルの部分とともに、田口春夫に建物所有の目的で賃貸され、一体的に使用されていた。

(2) 本件四一九番一の宅地のうち67.05平方メートルの部分は、本件四二〇番二の宅地のうち12.28平方メートルの部分とともに、南原正男に建物所有の目的で賃貸され、一体的に使用されていた。

(3) 本件四一九番一の宅地のうち59.04平方メートルの部分は、西川清に、同宅地のうち99.17平方メートルの部分は、鈴木勇三郎にそれぞれ建物所有の目的で賃貸され、使用されていた。

(4) 本件四一九番一の宅地のうち25.43平方メートルの部分は、駐輪場として使用されている本件四二〇番二の宅地のうち97.40平方メートルの部分と接続し、通り抜けの通路として使用されていた。

(5) 本件四三二番二の宅地は、本件四三三番三の宅地のうち19.37平方メートルの部分とともに、被告E、同F、同株式会社Hに建物所有の目的で賃貸され、一体的に使用されていた。

右認定の事実によれば、右(1)ないし(5)の各宅地ないし宅地部分は、評価細則に照らしそれぞれ一体として評価すべき宅地であったといいうるから、これらをそれぞれ本件一体画地と定めたことには、合理性がある。

3  本件宅地の更地価額の評価について

(一) 前記のとおり、原告及び収用委員会は、いずれも、昭和六三年三月二五日を評価基準日として本件宅地の更地価額を評価しているが、原告は、当初昭和六二年八月二四日を評価基準日と予定して日本不動産、吉野アプレイザル及び大和不動産に鑑定を依頼し、その後日本不動産と吉野アプレイザルに昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの間の土地価格の変動率の調査を依頼し、その調査結果の平均値である一九パーセントをもって右期間中の地価の変動率とし、右割合によって当初の調査価格を修正した。そこで、右価格修正の当否について検討する。

乙第二、第三号証、及び証人平舘勝紘の証言によれば、国土庁土地鑑定委員会編「地価公示」における草加市内商業地の公示地価格の昭和六三年一月一日における対前年変動率は141.6パーセント、同六四年一月一日における対前年変動率は11.6パーセントであり、国土庁土地局編「昭和六三年都道府県地価調査結果のあらまし」における草加市内商業地の基準地価格の昭和六三年七月一日における対前年変動率は64.7パーセントであることが認められる。したがって、右事実に照らすと、原告が採用した地価の前記変動率は、明らかに実際の変動率より著しく低い数値であって、合理性を欠くものであるから、採用することができない。

もっとも、原告は、当時は未曾有の地価変動期であって、地価変動率を正確に把握することは非常に困難であり、日本不動産と吉野アプレイザルは、このような特殊事情の下で、調査時点において収集可能な資料に基づき時点修正率を算定したから、原告が採用した地価変動率は妥当であると主張する。

しかし、従前資産の価額は、前記のように近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額であるから、右価額の当否を巡る訴訟においてこれを決定する場合には、右のような意味における客観的な相当の価額を審査し決定すべきであって、施行者が価額を決定した方法や理由の如何によってこれを決定すべきではないから、原告の右主張は失当であって、採用することができない。

なお、甲第五号証の二、第六号証の二によれば、吉野アプレイザルと大和不動産は、昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの間の土地価格の変動率を調査するに当たり、昭和六一年七月一日から昭和六二年七月一日に至る草加市の商業地の基準地の変動率を調査確認しており、吉野アプレイザルは、三か所の上昇率をそれぞれ45.2パーセント、57.5パーセント、59.6パーセントであるとし、大和不動産は、上昇率が右59.6パーセントの箇所だけを挙げており、しかし、両者とも、変動率は昭和六二年一一月以降は横這いで推移すると推定して、昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの間の土地価格の上昇率を決定したこと、もっとも、右二社とも、昭和六二年一一月以降は変動率が横這いで推移すると推定した根拠を具体的に説明していないことが認められる。したがって、右事実によれば、吉野アプレイザルと大和不動産も、昭和六二年八月二四日以後の地価の上昇率が極めて高いことを認識しており、ただ昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの間の土地価格の変動率につきその趨勢の推定が妥当しなかったものであり、しかし、右二社の推定の根拠は具体的に明確でないから、右二社がおよそ右期間中の土地価格の変動率をより正確に推定することができなかったとは、必ずしもいえない。

また、原告は、仮に被告らに係る従前資産についてのみ、後に判明した資料に基づいて時点修正をすることになれば、他の権利者との間で不公平な結果が生じるから妥当でないと主張する。しかし、前記のとおり本件事業における権利変換計画の縦覧期間は昭和六三年五月三〇日から同年六月一二日までであり、評価基準日から二か月以上経過しているから、権利者は、右縦覧を行い、自己の従前資産の価額につき異議がある場合には、意見書を提出することができたものである。このように、権利変換計画における自己の従前資産の価額を争うかどうかは、各権利者の意思に委ねられており、また前記のような従前資産の価額の意義に照らすと、従前資産の価額を巡る訴訟において、右価額を決定するに当たり、権利変換計画における従前資産の価額を争わなかった者との間の衡平まで顧慮する必要性はないというべきである。

したがって、原告の定めた昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの時点修正率は相当でないと認められるから、日本不動産、吉野アプレイザル、大和不動産の鑑定内容について検討するまでもなく、右時点修正率を前提として算出した本件宅地の更地価額を採用することはできない。

(二) そこで、川名鑑定の結果と大手町鑑定の結果について検討する。

前記第二の二3のとおり、両鑑定においては、いずれも、本件一体画地をA、B、Cの三近隣地域に分類し、A近隣地域の標準価格を取引事例比較法等によって算定したうえ、各近隣地域の地域格差の比較からB、C各近隣地域の標準価格を求めるという手法を採用しており、基本的に手法に違いはない(なお、各一体画地の価額から各個別画地の価額を算出するについては、川名鑑定は、一体画地の一平方メートル当たりの価額に個別画地の面積を乗じる方法を採り、これに対し、大手町鑑定では、個別画地が一体化することによる評価差額という概念を取り入れて算定しているが、右手法自体にはいずれも合理性があるから、このような手法の違いは問題とならない。)。

そこで、両鑑定における各近隣地域の区分の仕方、各近隣地域の地域格差の算定、近隣地域の標準画地と本件各一体画地の個別格差の算定を比較検討して、その相当性を判断することとする。

(1) 川名鑑定の要旨は前記第二の二3(一)のとおりであるが、甲第一〇号証によれば、川名鑑定の詳細は次のとおり認められる。

① 本件一体画地の属する近隣地域を次の三地域に区分してその価格形成要因を考察した。

ア A近隣地域

(範囲)

草加駅東口から県道浦和草加線に至る県道草加停車場線沿いのうち再開発施行区域内(駅前通り・幅員約一二メートル)である。

(地域の特性)

右地域は、草加駅を核とする商業地のうち、店舗の連たん性・繁華性・顧客の流動性とも良好な熟成した商業地域を形成していた地域である。しかし、建物は低層なものが多く、土地の細分化も相当程度進んでいたため、大型店及び新興商業地の出現に対し競争力を失いつつあった。右近隣地域の標準的使用は、間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートルの長方形状の画地を二階建程度の店舗の敷地として利用することである。

(地勢・地盤)

地勢は平坦であり、地盤も市内においては標準的である。

(供給処理施設)

上下水道及び都市ガスの設備はあるが、公共下水道の設備はない。

(公法上の規制)

商業地域、建ぺい率七〇パーセント、容積率五五〇パーセント、防火地域、高度利用地区の指定である(本件価額評価時点当時)。

(最有効利用)

三ないし五階程度の店舗事務所の敷地として利用することである。

イ B近隣地域

(範囲)

A近隣地域のやや草加駅寄りを南北に走る幅員約六メートルの市道沿いのうち、駅前通りから北へ約一〇〇メートルの地域。

(地域の特性)

草加駅との近接性はA近隣地域とほぼ同等であるが、店舗の連たん性、繁華性とも相当に劣る商業地である。建物は低層なものが多く、土地の細分化も相当程度進んでいた。右近隣地域の標準的利用規模は、A近隣地域の標準画地とほぼ同等である。

(地勢・地盤、供給処理施設及び公法上の規制)

これらの点については、A近隣地域の標準画地と同様である。

(最有効利用)

三ないし五階程度の店舗事務所の敷地として利用することである。

ウ C近隣地域

(範囲)

A近隣地域の北側背後地のうち、道路の幅員が二ないし三メートルの狭隘なものに接面した地域。

(地域の特性)

右地域は、商業的用途への転換の可能性を持っているが、個々の不動産単独では、容易に商業用地に転換して利用することのできない不動産によって構成されている地域であり、居宅、共同住宅等が混在している。右地域の土地の標準的利用及び規模は、二階建程度の居宅の敷地として、間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートル程度の土地を利用することである。

(地勢・地盤、供給処理施設及び公法上の規制)

これらの点については、A近隣地域の標準画地と同様である。

(最有効利用)

二階建程度の店舗事務所兼居宅の敷地として利用することである。

② A近隣地域の標準価格

A近隣地域のほぼ中央部に前記のとおり南側が幅員約一二メートルの舗装道路に接面した間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートル程度の整形中間画地を想定し、右画地について比準価格、収益価格、地価公示価格を規準として、一平方メートル当たりの価格を次のとおり算定した。

比準価格 二三三万八〇〇〇円

収益価格 一四一万六〇〇〇円

規準価格 一五六万六〇〇〇円、一八五万四〇〇〇円(A近隣地域内の二か所のそれによる)

右のうち、比準価格と収益価格に開差がある理由は、本件価格評価時点当時は未曾有の地価高騰期にあり、比準価格がやや先行的に形成されたためであり、比準価格を重視し、規準価格との均衡にも配慮して比準価格からその端数を調整した一平方メートル当たり二三〇万円をもってA近隣地域の標準価格とした。

③ B近隣地域の標準価格

ア B近隣地域のほぼ中央部に前記のとおり東側が幅員約六メートルの舗装道路に接面した間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートル程度の整形中間画地を想定した。

イ A近隣地域とB近隣地域の地域要因を比較し、A近隣地域はB近隣地域よりも街路条件において一五パーセント、接近条件において一〇パーセント、環境条件において三五パーセント優れている。したがって、B近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、A近隣地域のそれは一六〇となる。

ウ そこで、A近隣地域の標準価格である二三〇万円に一六〇分の一〇〇を乗じた価格に端数処理をして得られた価格である一平方メートル当たり一四三万八〇〇〇円をもってB近隣地域の標準価格とした。

④ C近隣地域の標準価格

ア C近隣地域のほぼ中央部に前記のとおり東側が幅員約二メートルの舗装道路に接面した間口約八メートル、奥行約一五メートル、地積約一二〇平方メートル程度の整形中間画地をそれぞれの標準画地として想定した。

イ B近隣地域とC近隣地域の地域要因を比較し、B近隣地域はC近隣地域よりも街路条件において二〇パーセント、接近条件において一〇パーセント、環境条件において五〇パーセント優れているとした。したがって、C近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、B近隣地域のそれは一八〇となる。

ウ そこで、B近隣地域の標準価格である一四三万八〇〇〇円に一八〇分の一〇〇を乗じた価格に端数処理をして得られた価格である一平方メートル当たり七九万九〇〇〇円をもってC近隣地域の標準価格とした。

⑤ 右のようにして求めた各標準価格を基礎として、次のとおり右各標準画地と本件一体画地の個別要因を比較し(次の表のうち、「個別要因」欄は、各近隣地域の標準価格を一〇〇とした場合の数値を表す。)、本件一体画地の一平方メートル当たりの更地価格を算出し、これに本件個別画地の評価地積を乗じて本件個別画地の更地価格を(別紙一五)中の「一 画地の価額」における「個別画地の更地価額」欄記載のとおり算定した。

画地番号 近隣地域 個別要因 本件一体画地の更地価額(円)

一  A 一〇〇 二三〇万〇〇〇〇

二  A 一〇〇 二三〇万〇〇〇〇

三  A  八〇 一八四万〇〇〇〇

四  A 一〇五 二四一万五〇〇〇

五  A  九七 二二三万一〇〇〇

六  B  九七 一三九万五〇〇〇

七  C 一〇〇 七九万九〇〇〇

八  C 一〇〇 七九万九〇〇〇

九  C 一〇三 八二万三〇〇〇

一〇  C 一〇九 八七万一〇〇〇

一一  C 一〇〇 七九万九〇〇〇

一二  C  三〇 二四万〇〇〇〇

一三  A  八五 一九五万五〇〇〇

一四  A  八五 一九五万五〇〇〇

一五  A  八五 一九五万五〇〇〇

一六  A  九〇 二〇七万〇〇〇〇

一七  A  五〇 一一五万〇〇〇〇

一八  A 一〇〇 二三〇万〇〇〇〇

一九  C 一〇四 八三万一〇〇〇

二〇  C 一〇〇 七九万九〇〇〇

二一  C 一〇二 八一万五〇〇〇

二二  C 一〇〇 七九万九〇〇〇

二三  C  三〇 二四万〇〇〇〇

二四  C  三〇 二四万〇〇〇〇

(2) 大手町鑑定の要旨は前記第二の二3(二)のとおりであるが、乙第一号証によれば、大手町鑑定の詳細は次のとおり認められる。

①  本件一体画地の属する近隣地域を次の三地域に区分してその価格形成要因を考察した。

ア A近隣地域

(位置及び概況)

草加駅東口から県道浦和草加線に至る県道草加停車場線の沿道地域で、草加駅東口に近接しており、右県道沿いに低層の小規模小売店舗が建ち並ぶ駅前商業地域を形成している。

(街路条件)

県道草加停車場線を中心に、当該道路に数本の市道が連絡し、これら街路は東方で、主要地方道足立・越谷線、県道鶴ヶ曽根・草加線へ連続している。なお、旧来からの街路を中心とする近隣地域は、配置の整然性に若干の問題を残す状況となっている。

(交通接近条件)

最寄駅草加駅へ近接の状況にあり、南方約二〇〇メートル付近に小売店舗が集積している。

(環境条件)

草加市内の第一種大型店舗の八〇パーセント余を周辺地域に持ち、その背後地を市内のほぼ全域及び埼玉県内の周辺市町村にまで拡大している。したがって、顧客の量は多く、市内最大の大型小売店舗や市役所が草加駅東口に位置することから、顧客の通行量も豊富である。しかし、利用状況は、低層の小規模小売店舗が中心となっており、商業施設の整備が立ち遅れている。供給処理施設は、公営上水道、公共下水道のほか、都市ガスが整備されている。

(行政的条件)

都市計画上の用途地域として商業地域に属するほか、地域地区として防火地域及び高度利用地区に属している。なお、建ぺい率七〇パーセント、最低容積率二〇〇パーセント、最高容積率五五〇パーセントである。

イ B近隣地域

(位置及び概況)

草加市高砂二丁目九番街区の東側を南北に走行する市道三〇一四八号線沿道地域で、草加駅東口の北東方約九〇メートルに位置しており、市道沿いに小規模な飲食店舗や日用品等の小売店舗が建ち並ぶ商業地域を形成している。

(街路条件)

幅員約5.5メートルの舗装市道三〇一四八号線が近隣地域を東西に分割するように、南北方向に走行している。この街路は、南で県道草加停車場線へ連続しており、系統連続性に難はないが、区画街路の配置に計画性がなく、街路の配置上若干の問題を残している。

(交通接近条件)

草加駅まで程近いほか、商業中心地である草加駅東口通り商店街及び大型小売店舗までも近い。

(環境条件)

背後地の状況及び顧客の量は、A近隣地域と同じである。なお、商業中心地の一つである小売店舗の集積する地域が県道草加停車場線の南方に位置することから、A近隣地域との比較において、環境条件が劣ることは否めない。また、土地利用状況は、小規模画地上に低層の小売店舗があるという状況である。供給処理施設は、上・下水道、都市ガスが完備している。

(行政的条件)

この点については、A近隣地域と同様である。

ウ C近隣地域

(位置及び状況)

県道草加停車場線の北側背後の地域で、草加駅東口の北東約一二〇メートルに位置しており、低層の小規模一般住宅を中心に、一部に店舗、事業所も見受けられる、商住用途の混在する地域である。

(街路条件)

幅員二メートル程度の狭隘な街路が旧来のまま配置されており、系統・連続性のほか、計画性、配置の整然性等の条件が劣っている。なお、地域内の街路は、建築規準法四二条二項による指定を受けている。

(交通接近条件)

草加駅までは徒歩数分であり、学校、市役所、病院等の公共・公益施設のほか、商店等の日常便利施設も周辺に整っている。

(環境条件)

右街路条件から、日照・通風等の自然的環境は、良好とは認めがたい。各画地の配置の状態は、普通程度であり、その利用状況は、一〇〇平方メートル内外の小規模画地が木造低層の一般住宅敷地を中心として利用されていた。また、供給処理施設として、上・下水道、都市ガスが完備している。なお、商業地域としては、街路条件及び客足の流動性との適合性の欠如から、環境条件に劣るが、近い将来、一体的に開発されて高度商業地域へと移行する蓋然性が高く、商業地域へ転換する可能性を有する。

(行政的条件)

この点については、A近隣地域と同様である。

②  A近隣地域の標準価格

A近隣地域の標準画地の更地価格は、比準価格、収益価格、地価公示価格を規準とした一平方メートル当たりの価格を次のとおり算定した。

比準価格 二四二万〇〇〇〇円

収益価格 一八一万〇〇〇〇円

規準価格 二〇八万〇〇〇〇円

右のうち、比準価格と収益価格に開差がある理由は、賃料の上昇は元本たる土地価格の上昇に対して粘着的かつ遅行的な性格を有し、本件評価時点のような地価上昇期にあっては土地価格との連動性が稀薄となることである。そこで、収益価格は、比準価格よりも低く試算されたものと考え、収益価格を参考としながらも、公示価格によって裏付けられた比準価格を重視して、A近隣地域の標準価格を一平方メートル当たり二四二万円と決定した。

③  B近隣地域の標準価格

ア A近隣地域とB近隣地域の地域要因を比較し、B近隣地域はA近隣地域よりも街路の幅員、歩道の有無において七パーセント、最寄駅への近接性において三パーセント、繁華性の程度、店舗の連たん性において五パーセント、客足の流動性との適合性において五パーセント、容積率において一五パーセント劣っている。したがって、A近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、B近隣地域のそれは六九である(すなわち、100×0.93×0.97×0.95×0.95×0.85=0.65となる。なお、B近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、A近隣地域の地域要因は約144.9である。)。

イ そこで、A近隣地域の標準価格である二四二万円に一〇〇分の六九を乗じて得られた価格である一平方メートル当たり一六七万円をもってB近隣地域の標準価格とした。

④  C近隣地域の標準価格

ア A近隣地域とC近隣地域の地域要因を比較し、C近隣地域はA近隣地域よりも街路の系統、連続性、幅員等において二〇パーセント、最寄駅への接近性において五パーセント、繁華性の程度、周辺の利用状況において三五パーセント、容積率において二〇パーセント劣っている。したがって、A近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、C近隣地域のそれは四〇となる(なお、C近隣地域の地域要因を一〇〇とすると、A近隣地域の地域要因は二五〇となる。)。

イ そこで、A近隣地域の標準価格である二四二万円に一〇〇分の四〇を乗じて得られた価格である一平方メートル当たり九六万八〇〇〇円をもってC近隣地域の標準価格とした。

⑤  右のようにして求めた各標準価格を基礎として、次のとおり右各標準画地と本件一体画地の個別要因を比較し(次の表のうち、「個別要因」欄は、各近隣地域の標準価格を一〇〇とした場合の数値を表す。)、本件一体画地の一平方メートル当たりの更地価格を算出した。

画地番号 近隣地域 個別要因

本件一体画地の更地価格(円)

一  A 一〇〇 二四二万〇〇〇〇

二  A 一〇〇 二四二万〇〇〇〇

三  A  八六 二〇八万〇〇〇〇

四  A 一〇七 二五九万〇〇〇〇

五  A 一〇〇 二四二万〇〇〇〇

六  B 一〇〇 一六七万〇〇〇〇

七  C  九四 九一万〇〇〇〇

八  C  九三 九〇万〇〇〇〇

九  C  九四 九一万〇〇〇〇

一〇  C  九七 九三万九〇〇〇

一一  C  九七 九三万九〇〇〇

一二及び

二四 C  四八 四六万五〇〇〇

一三  A  九三 二二五万〇〇〇〇

一四  A  九三 二二五万〇〇〇〇

一五  A  九一 二二〇万〇〇〇〇

一六  A  九〇 二一八万〇〇〇〇

一七  A  八八 二一三万〇〇〇〇

一八  A  九九 二四〇万〇〇〇〇

一九  C  九六 九二万九〇〇〇

二〇  C  九八 九四万九〇〇〇

二一  C  九八 九四万九〇〇〇

二二  C  九六 九二万九〇〇〇

二三  C  五〇 四八万四〇〇〇

(3) そこで、右認定の事実に基づき、川名鑑定と大手町鑑定の各内容を比較検討する。

①  まず、近隣地域の区分の仕方については、両鑑定はほぼ同様であり、本件各一体画地がA、B、C各近隣地域のいずれに該当するかも全て一致しており、両鑑定の行った近隣地域の区分の仕方に不合理な点はなく、その内容は適正なものであると認められる。

②  次に、A近隣地域の標準価格の算定をみると、両鑑定とも取引事例比較法によって得られた比準価格を重視し、収益価格及び規準価格を参考にしてその価格を求めており、またこのようにして求められた標準価格も、川名鑑定が一平方メートル当たり二三〇万円、大手町鑑定が同二四二万円であって、ほぼ同様の結果が得られており、右算出の過程において特に不合理な点はない。したがって、右標準価格の算定については、両鑑定のいずれも、適正な範囲内のものであると認められる。

③  A近隣地域とB、C両近隣地域との地域要因の格差について、両鑑定の結果を比較すると、次のとおりとなる(なお、川名鑑定はA近隣地域とB近隣地域、B近隣地域とC近隣地域を比較しており、大手町鑑定はA近隣地域とB近隣地域、A近隣地域とC近隣地域を比較しているので、理解の便宜のため、後者の形式に統一する。)。

A    B    C

川名鑑定

一〇〇 62.5 34.7

大手町鑑定

一〇〇 69   40

右のように、川名鑑定と大手町鑑定の差は、B近隣地域において6.5パーセント、C近隣地域において5.3パーセントであって、この程度の開差は一応許容範囲内であるということができる。

そこで、次に両鑑定が評価採用した各地域要因の内容を検討する。前記のような両鑑定の内容によれば、両鑑定で使用されている「街路条件」「接近条件」「環境条件」「行政条件」の各意義は同旨であるから、右用語によって地域要因を比較すると、次のとおりである(なお、ここでも、A近隣地域とB近隣地域、A近隣地域とC近隣地域の比較とする。)。

(川名鑑定) A B C

街路条件

一〇〇 86.9 72.4

接近条件

一〇〇 90.9 82.6

環境条件

一〇〇 74   49.3

行政条件

一〇〇 100  100

(大手町鑑定) A B C

街路条件

一〇〇 93   80

接近条件

一〇〇 97   95

環境条件

一〇〇 90   65

行政条件

一〇〇 85   80

これによれば、両鑑定の差異は、特に環境条件と行政条件において著しく、その開差は一五パーセント以上になるところ、前認定のように、A近隣地域は顧客の流動性が良好な商業地域であり、B近隣地域は商業地域であるが環境条件はA近隣地域に比べ相当劣り、また、C近隣地域は商業的用途への転換可能性を持っているものの、日照・通風等の自然的環境は良好とはいえず、現状では小規模な木造低層住宅敷地としての利用が中心であるから、このような事実に照らすと、環境条件の評価については、川名鑑定の結果の方がより合理性があるというべきである。また、前記のようにB、C各近隣地域の行政条件とA近隣地域のそれは同じであるから、大手町鑑定が、行政条件につき、特に理由を付さないで、B近隣地域について一五パーセント、C近隣地域について二〇パーセントの減としたことには、合理性がないというべきである。したがって、大手町鑑定における近隣地域の地域要因の評価には、不適当・不合理な点があるから、大手町鑑定の結果は採用することができない。

なお、原告は、川名鑑定が行われた当時、B、C各近隣地域における建築物は殆ど取り壊されていたので、同鑑定においては、右各近隣地域における右のような不利な状況を十分に把握できなかったため、B、C各近隣地域の評価が適正でないと主張し、証人平舘勝紘の証言中にも右主張に沿う供述がある。

しかし、街路条件(街路の幅員、系統連続性、配置等)、接近条件(駅、商業中心地等からの距離)、行政条件(都市計画上の用途地域、建築基準法上の規制(建ぺい率、容積率)等)は、鑑定をした当時に地域内の建物が取り壊されていたとしても、他の資料により十分にこれに関する情報を収集することができるから、建物が取り壊されていたことによって、これら地域要因の認定・評価に障害が生じたということはできない。

もっとも、環境条件(店舗の連たん性、繁華性、顧客の流動性その他の土地利用状況)については、地域を実地に見分して調査をすることが一つの重要な調査方法であるといいうるけれども、他面において、必ずしも実地見分をしなければ正しい評価をなしえないということもできず、当時の写真その他の資料に基づいてできるだけ実態に沿った正当な評価をすることは可能であるから、実地見分による調査を十分にできなかったというだけで、当該鑑定の結果を排斥することはできない。そして、前認定のとおり、川名鑑定は、B、C各近隣地域の環境条件につき、その判断の根拠となる事実を具体的に認定しており、右事実の認定につき不適当な点があり、引いて各近隣地域の環境条件の評価を誤ったと認めるに足りる証拠はない。

④ア  ちなみに、両鑑定の間で、左記のように各近隣地域の標準画地と本件各一体画地の個別要因の格差が著しいものがある(各鑑定欄の数値は、標準画地の個別要因を一〇〇とした場合の本件一体画地の鑑定値である。)。

画地番号 川名鑑定 大手町鑑定

一二   三〇   四八

一七   五〇   八八

二三    三〇   五〇

二四    三〇   四八

イ  甲第一〇号証及び乙第一号証によれば、右各画地における両鑑定の個別要因(標準画地を一〇〇とした場合)は、次のとおりであると認められる。

(川名鑑定)

画地番号 個別要因

一二 画地条件・七〇減

一七 接近条件・五減、環境条件・五減、画地条件・四〇減

二三  画地条件・七〇減

二四  画地条件・七〇減

(大手町鑑定)

画地番号 個別要因

一二 道路敷・五〇減、地積過小・五減

一七 路地状画地・一〇減、客足の流動性との適合・一減、最寄駅・商業中心地からの距離・一減

二三  道路敷・五〇減

二四  道路敷・五〇減、地積過小・五減

ウ 右認定の事実によれば、両鑑定には、道路敷や路地状画地であることによる画地条件の劣性の評価において、大きな差異があるから、次にその理由について検討する。

乙第一号証によれば、大手町鑑定においては、本件一体画地及び本件個別画地の個別増減価要因及び増減価率の査定は次の考え方に準拠して行われたことが認められる。

(画地規模)

一体開発の蓋然性が高いことから、極小画地にあっても、通常よりも減価の程度は低いものと考える。

(形状・間口・奥行)

再開発地内にあっては、一体開発の蓋然性の高さ等から通常と比較して形状・間口・奥行の関係による減価の程度は低いものと考える。

(無道路地)

接面道路を持たない、いわゆる無道路地は、建築物の建築ができないため、標準画地と比較して通常五〇パーセント程度の減価率が把握されるものであるが、再開発ビル用地として一体的に開発される蓋然性の高い地域においては、減価の程度は緩和されるものと考え、減価率を二〇パーセントと判定した。

(私道敷及びセットバック潰地)

再開発ビル地内にあっては、私道敷の価値は更地(再開発敷地)へと転換する可能性が高いために、本来の私道敷としての価値よりも高い価値になる傾向を有する。このような宅地転換への潜在性を根拠に、私道敷に基づく減価率を五〇パーセントと査定した。また、建築基準法四二条二項道路に係るいわゆるセットバック減価については、私道敷より更に低めの減価率三〇パーセントを採用した。

エ そうすると、大手町鑑定においては、再開発区域内における画地条件について減価率を緩やかにしているので、この点に合理性があるかどうかについて検討する。

前記のように、従前資産の価額は、権利変換処分によって変換後資産を取得する場合には、権利変換処分の前後における各資産の価値を把握比較し、従前資産と変換後資産の均衡を判断しあるいは清算金を決定する要素であり、権利変換を希望しない場合には、補償金を決定する要素と成るものであり、その評価の基準日は、法七一条一項又は五項の規定による三〇日の期間を経過した日と定められ、その価額の意義は、右評価基準日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とすると定められているのであるから、従前資産の価額は、当該資産の右基準日における状態を対象として決定すべきであって、都市再開発事業の完成後の改善された状態を考慮することは、そもそも従前資産の価額という概念と矛盾するものである。

もっとも、都市再開発の施行区域として指定された地域は、将来都市再開発がなされるという期待のために現実の取引において取引価格が上昇することがあり得るが、このような価格の上昇は、他の一般的な原因による価格の上昇と同じく、正常な取引価格の推移の範囲内の事柄といい得るから、このような取引価格を考慮して従前資産の価額を決定することは、従前資産の決定基準に違背するものではない。しかしながら、大手町鑑定は、前記のように、道路敷の画地や路地状画地につき、一体開発の蓋然性が高いとの理由によって五〇パーセントあるいは一〇パーセントの減価に止めているのであるから、右評価は、評価基準日における取引価格を基準としたものではなく、都市再開発事業の効果による土地価格の増価を考慮したものといわざるをえず、右認定に反する証人根岸一雄の証言部分は、採用することができない。したがって、画地番号一二、一七、二三、二四の各画地についての大手町鑑定の結果は、評価の基準を誤ったものとして、採用することができず、これに反し、右各画地に関する川名鑑定の結果は、都市再開発事業の効果による土地価格の増価を考慮していないから、適正であるということができる。

(三) 以上のとおり、本件宅地の更地価格を算定するについて、原告の行った評価は、昭和六二年八月二四日から同六三年三月二五日までの時点修正率が適正でないから採用できず、また大手町鑑定の結果は、各近隣地域の地域要因の評価及び各近隣地域の各標準画地と本件各一体画地の個別要因の比較において不相当な点があるから採用することができないが、川名鑑定の結果は相当であると認められるから、川名鑑定の結果を採用すべきである。したがって、本件一体画地及び個別画地の価額は、(別紙一七)中の「一 画地の価額」に記載のとおりである。

4 本件宅地に係る借地権割合の評価について

(一) 日本不動産の査定

(1) 原告は、前記第二の二2(三)(5)のとおり本件宅地に係る借地権の割合につき日本不動産に調査を依頼したところ、甲第一三ないし第二二号証、第二四ないし第二八号証によれば、日本不動産は、次のとおり各借地権の割合を査定したことが認められる。

① まず、近隣地域の状況、借地権慣行及び調査対象地の状況を調査した。このうち、借地権慣行の調査結果は、左記のとおりである。

ア 借地権取引慣行の成熟の程度

当地域は相続税財産評価基準の路線価地域である。借地権の取引慣行はあるが、実際の取引は少ない。

イ 借地権の在り方及び一時金の慣行

非堅固建物の所有を目的とする借地権と堅固建物の所有を目的とする借地権とが混在している地域で、契約は書面によるものと口頭によるものとが半々程度である。借地権の譲渡にあたっての名義書換料、増改築承諾料等の一時金の授受はほぼ慣行化されているが、契約期間の更新に当たって更新料の授受を伴わない場合も認められる。

② 次に、借地権割合の査定に当たっては、当該土地の正常実質賃料相当額から実際支払賃料相当額を控除した額(差額賃料)を資本還元して得た収益価格に基づく借地権割合と、慣行割合に基づく借地権割合とを調整して求めた。

ア 差額賃料を資本還元して借地権割合を算定するに当たり、期待利回り(賃貸借に供する不動産を取得するために要した一定額の資本に対して期待される収益の、その資本に対する割合)は、近隣地域及び周辺地域の賃料の値上がりの動向を考慮して査定した。また、現行の実際支払賃料が不明な場合は対象地の昭和五七年ころの実際支払賃料及び周辺地域の賃料の上昇率並びに周辺地域における類似借地の現行賃料水準を考慮のうえ、月額支払賃料を査定した。

イ 慣行割合に基づく借地権割合は、契約後相当期間を経過しており契約残存期間及び建物の経済的残存耐用年数が相当程度残っている借地権であることを前提とし、左記ⅰないしⅲの割合を総合的に考慮して、決定した。

ⅰ 地元精通者による近隣地域及び同一需給圏内の類似地域における慣行借地権割合は六〇ないし七〇パーセントである。

ⅱ 国土庁調査による、県内の当該近隣地域と類似する非堅固建物所有目的の借地権割合は五五パーセントないし七〇パーセントである。

ⅲ 相続税路線価における当該近隣地域の借地権割合は本件一体画地のうち画地番号一、二、四、一三、一四、一五、一六及び一八について七〇パーセント、画地番号六、七、八、九、一〇、二一及び二二について六〇パーセントである。

そして、本件宅地に係る借地権については、右標準的な借地権に比べて借地権割合に開差を生じる増減価要因は特にないため、標準的な借地権割合をそのまま採用し、慣行割合に基づく借地権割合を、本件一体画地のうち画地番号一、二、四、一三、一四、一五、一六及び一八について七〇パーセント、画地番号六、七、八、九、一〇、二一及び二二について六〇パーセントと査定した。ただし、本件一体画地のうち画地番号二一に係る借地権は契約残存期間は二年であるが、当該近隣地域においては契約期間の更新に当たっての更新料の授受は慣行化されるに至っていないので標準的な借地権割合をそのまま採用することとした。

③ 以上のようにして求めた差額賃料の資本還元による借地権割合及び慣行割合に基づく借地権割合を比較考量したうえ、本調査は市街地再開発事業における個別権利割合の調査であることから、他の再開発事業地区でも多く採用されており、地域の借地権取引の需給動向を反映した慣行割合を重視し、当該契約の内容等を考慮して、本件宅地に係る借地権割合を(別紙一四)中の「一 画地の価額」における「借地権割合」欄記載のとおり決定した。

(2) 右認定の事実によれば、借地権割合に関する日本不動産の鑑定の内容及び判断の過程並びに結論には、特段不合理な点はない。

(二) 川名鑑定における借地権割合の査定について

(1) 前記第二の二3(一)(1)の事実及び甲第一〇号証によれば、川名鑑定における借地権割合の査定の内容は次のとおりであると認められる。

① 借地権の割合は、契約内容・経緯及び残存期間、一時金の有無とその額並びに地上建物の老朽化の程度(建替えの必要性・朽廃の危険性)等を総合的に勘案して決定すべきものであるが、対象物件の全てについて、同一水準でこれらの事項を明確に把握できず、また、適切な借地権の取引事例も収集できなかった。

② そこで、左記のような類似地域における底地の取引事例、相続税路線価図に記載されている借地権割合及び世評等を勘案した。

底地の取引事例における借地権割合

六五ないし七五パーセント

相続税路線価図における借地権割合

六〇パーセント

世評による借地権割合

六〇ないし七〇パーセント

③ 右要素のうち、底地の取引事例における借地権割合は、底地のみの市場性が乏しいことからいずれも割安であったと判断し、各近隣地域における普通建物所有を目的とする標準的な借地権割合を六〇パーセント、堅固建物所有を目的とする借地権割合を六五パーセントと査定した。

(2) 右認定の事実によれば、川名鑑定においては相続税路線価図による借地権割合は六〇パーセントとし、これと世評による借地権割合(六〇ないし七〇パーセント)の両者を勘案して、普通建物所有を目的とする標準的な借地権割合及び堅固建物所有を目的とする借地権割合を査定しているけれども、甲第一六ないし第一八号証、第二〇ないし第二二号証、第二四号証、第二七号証及び乙第一号証によれば、本件一体画地のうち画地番号一、二、四、一三、一四、一五、一六及び一八の属する近隣地域については、相続税路線価図における借地権割合は七〇パーセントであると認められる。そうすると、川名鑑定は、相続税路線価図による借地権割合を誤っているのであるから、このような借地権割合を前提要素として算出された川名鑑定の本件一体画地の借地権割合は、その判断経過に不合理な点が存するのであって、これを採用することはできない。

(三) 大手町鑑定における借地権割合の査定について

(1) 乙第一号証によれば、大手町鑑定の内容は、次のとおりであると認められる。

① まず、相続税財産評価基準による借地権割合、慣行借地権割合及び県内市街地再開発事業における借地権割合を調査したところ、その結果は次のとおりであった。

ア 昭和六三年度国土庁相続税財産評価基準による借地権割合

近隣地域A 七〇パーセント

近隣地域B 六〇パーセント

近隣地域C 六〇パーセント

イ 近隣地域と代替関係にある東武伊勢崎線沿線の越谷市及び春日部市内の昭和六二年及び昭和六三年の各七月一日時点における慣行借地権割合

越谷市 (住宅地)五二パーセント、(商業地)六八パーセント

春日部市 (住宅地)五七ないし五八パーセント、 (商業地)六〇パーセント

ウ 県内の市街地再開発事業において採用されている借地権割合

谷塚駅東口地区第一種市街地再開発事業 六〇パーセント

川越駅東口第一種市街地再開発事業

六五パーセント

北与野駅第一種市街地再開発事業

六〇パーセント

② 右の状況及び本件事業の性格を総合的に勘案し、特に県内の市街地再開発事業において採用された借地権割合を重視して、各近隣地域における借地権割合をいずれも六〇パーセントと査定した。

(2)  しかし、同一県内の再開発事業であるといっても、それぞれの事業区域について地域差があることを考慮すべきであり、また、そもそも、従前資産の評価は、本来その資産が有していた価値を評価するものであるから、相続税財産評価基準による借地権割合及び慣行借地権割合を他の再開発事業における借地権割合よりも重視するのが適切である。したがって、大手町鑑定がA近隣地域における借地権割合を六〇パーセントとしたのは、妥当性を欠くものである。

なお、証人根岸一雄の証言中には、大手町鑑定において、A近隣地域に格差をつけずに本件事業の施行区域全体につき借地権割合を六〇パーセントと査定したのは、全体が商業地域であるから同一の借地権割合としたものであるとの部分がある。しかし、本件の場合、A近隣地域は駅前通りである県道草加停車場線に沿っている地域で、顧客の流動性等がもっとも多い商業地域であるのに対して、B近隣地域は、A近隣地域より環境条件が劣り、幅員約六メートルの市道沿に小規模画地の低層の小売店舗が立ち並び、さらにC近隣地域は、商業地域というよりも住宅を中心として利用されている地域であるから、これら近隣地域の全てを一律に同じ借地権割合とするのは、妥当性を欠くというべきである。

(四) したがって、本件宅地に係る借地権割合は、(別紙一七)中の「一画地の価額」における「借地権の割合」欄に記載のとおりである。

5 本件宅地に係る使用貸借権の評価について

(一) 甲第一〇号証、乙第一及び第四号証によれば、本件一体画地の使用状況のうち、使用貸借によるものは、次のとおりであると認められる。

(1) 画地番号五の一体画地は、被告Gが自己所有建物の敷地として使用していたものであり、同被告は、使用貸借契約により本件四二一番一、本件四二二番一及び本件四二三番一の土地の各一部をそれぞれ借り受けていた。

(2) 画地番号一一の一体画地は、被告Iが自己所有建物の敷地として使用していたものであり、同被告は、使用貸借契約により本件四三三番一及び本件四三四番二の土地の各一部をそれぞれ借り受けていた。

(3) 画地番号一七の一体画地のうち、本件四一九番一の土地の一部は株式会社和泉商会が駐輪場として使用し、本件四二〇番二の土地の一部はこれと接続し、通り抜けの通路として使用されていたものであり、同会社は右各土地をそれぞれ使用貸借契約により借り受けていた。

(4) 画地番号一九の一体画地は、被告E及び同Fが自己所有建物の敷地として使用していたものであり、同被告は、本件四三二番二及び本件四三三番三の土地の一部をそれぞれ使用貸借により借り受けていた。

(5) 画地番号二〇の一体画地は、被告Aが自己所有建物の敷地として使用していたものであり、同被告は本件四三三番一及び本件四三三番二の土地の各一部並びに本件四三三番四及び本件四三二番三の土地をそれぞれ使用貸借により借り受けていた。

(二) 次に、右各使用貸借の割合について検討する。

(1) 原告は、(別紙一四)のとおり、右各使用貸借権については、その割合を全く認めていない。

(2) 甲第一〇号証によれば、川名鑑定においては、使用借権者は土地の利用により相当の経済的利益を受けており、また使用借権のある土地を所有権者が利用しようとする場合には、時間的、金銭的負担が生じる可能性もあるとして、建物の敷地として利用されている場合は更地価格の一〇パーセント、それ以外の場合は五パーセント程度を減価したことが認められる。

(3) 乙第一号証によれば、大手町鑑定においては、使用貸借は譲渡性、永続性が確保されておらず、したがって、取引市場も存在しないが、公共用地取得等の際の補償に関して価格が顕在化する場合があるとして、公共用地取得に伴う損失補償基準に定める使用貸借の割合を参考に、使用借権割合は、標準借地権割合である六〇パーセントに三分の一を乗じた二〇パーセントと査定したことが認められる。

(4) 乙第七号証によれば、公共用地の取得に伴う損失補償基準一三条によれば、使用貸借による権利に対する補償は、当該権利が賃借権であるものとして、賃借権に準じて算定した正常な取引価格に、当該権利が設定された事情並びに返還の時期、使用及び収益の目的その他の契約内容、使用及び収益の状況等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもって補償するものと定めていることが認められる。

(5) ところで、使用貸借は、場合によって内容が様々であり、当該権利が設定された事情、返還の時期、使用及び収益の目的その他の契約内容、使用及び収益の状況等によって、その割合を個別に決定すべきであり、事案によっては、賃貸借に近い割合を認めなければならないものから、使用貸借割合を全くないものとして扱ってよいものまで種々の場合があるということができる。したがって、使用貸借があるからといって、必ず使用貸借割合を認めその分を減価して宅地の価額を求めなければならないというものではないと解される。

本件における前記各使用借権は、目的土地が建物の敷地として使用されているものは、建物所有の目的と推定され、目的土地が駐輪場及びその通路として使用されているものは、そのような目的と推定されるが、それ以上に右各使用借権が設定された事情並びに返還の時期、その他の契約内容を認定し得る証拠はない。しかし、弁論の全趣旨によれば、本件の場合には、右各使用貸借は、いずれも親族間における契約関係であると認められる。そして、親族間の使用貸借においても、使用借権者は土地を利用し得る経済的利益を受けているということができるけれども、他方、親族間の使用貸借は、情誼に基づくものとして、親族関係がない者の間の使用貸借よりもその権利性が希薄であることが少なくないところ、甲第一号証の一並びに弁論の全趣旨によれば、本件使用借権者らは、本件権利変換計画において、その権利の価額が定められなかったことについて、別段意見書を提出していないものと認められ、また、被告らは、本訴においても、右使用借権の価額を問題としていない。そこで、このような事実を考慮すれば、前記各使用借権の割合を全く減価せずに宅地の価額を算定しても、特段不合理であるということはできない。

6 建築物の価額について

(一) 前記第二の二2(三)(6)の事実及び甲第三二ないし第三五号証及び第三七号証によれば、原告が依頼した吉野アプレイザルにおける本件各建築物の価額の査定は、次のとおり行われたことが認められる。

まず、本件各建築物の軸部、屋根、外壁、内壁、床、天井、基礎等について、構造、材種、材の品質、材の必要数量、実面積等を調査し、右結果に基づいて各部位別の係数を算出した。そして、右係数を合算したものに地域補正を加え、これに基づいて一平方メートル当たりの推定再建築費を(別紙一四)中の「二 建築物の価額」における「推定再建築費」欄記載のとおり算定した。次いで、各建築物の経過年数に応じて減価をし、各建築物の評価基準日における価額を(別紙一四)中の「二 建築物の価額」における「建築物の価額」欄記載のとおり査定した。

(二) 甲第一〇号証によれば、川名鑑定における本件建築物の査定は、次のとおり行われたことが認められる。

まず、各建築物について、再調達原価を(別紙一五)中の「二 建築物の価額」における「再調達原価」欄記載のとおり求め、次いで耐用年数に応じた物理的減価による減価修正又は残価率の査定による減価修正を行い、各建築物の評価基準日における価額を(別紙一五)中の「二 建築物の価額」における「建築物の価額」欄記載のとおり査定した。

(三) 乙第一号証によれば、大手町鑑定における本件各建築物の査定は、次のとおり行われたことが認められる。

まず、各建築物について再調達原価を(別紙一六)中の「二 建築物の価額」における「再調達原価」欄記載のとおり求め、右算定に当たっては、対象建築物と同種、同品等の建築物の価格時点における建築費を調査して、これを基準とするとともに、昭和六三年一月一日の時点における各対象建築物の固定資産税評価額とも比較した。次いで、各対象建築物の残存耐用年数に応じて定額法により減価額を査定し、右減価額を前記再調達原価から控除して、各対象建築物の積算価格を求め、これに端数処理をして各対象建築物の評価基準日における価額を(別紙一六)中の「二 建築物の価額」における「建築物の価額」欄記載のとおり査定した。

(四) 以上の調査及び鑑定を比較すると、吉野アプレイザルの調査と他の二鑑定との間で、本件四二一番三の建築物及び本件四三三番二の建築物について特に差異が大きい。すなわち、本件四二一番三の建築物について、吉野アプレイザルにおける推定再建築費は一八五五万八九八五円であるのに対し、川名鑑定及び大手町鑑定における再調達原価はそれぞれ三三一一万六〇〇〇円、三一一七万円であり、両者の間には一四〇〇万円以上の開きがあり、また、本件四三三番二の建築物については、吉野アプレイザルにおける推定再建築費が八二〇万五四七〇円であるのに対し、川名鑑定及び大手町鑑定における査定はそれぞれ一三三八万九六〇〇円、一一五七万円であり、五〇〇万円以上の差異がある。

そこで、右調査及び鑑定の合理性を検討すると、甲第一〇号証及び乙第一号証によれば、川名鑑定及び大手町鑑定の調査時点においては、本件四二一番三の建築物以外の本件各建築物は全て取り壊されており、また本件四二一番三の建築物についても外観しか調査できなかったことが認められる。そうすると、右両鑑定においては、本件各建築物自体の状態を確認していないのであるが、建築物の価額の査定は、その具体的状態を調査把握したかどうかによって正確性に差異が生じ得ることは否定できない。ところが、吉野アプレイザルの調査においては、前記のように本件各建築物の各部について、構造、材種、材の品質、材の必要数量等を実際に詳細に調査して、本件各建築物の価額を査定したものであり、その際右調査に不十分あるいは不合理な点があったと認めるに足りる証拠はない。したがって、本件各建築物の価額は、吉野アプレイザルの調査による価額が適当であると認められるから、(別紙一七)中の「二 建築物の価額」のとおりである。

7 したがって、本件従前資産の価額は、左記のとおりである。

(一) 本件宅地の価額

本件一体画地の更地価額については川名鑑定の結果を採用し、借地権割合については日本不動産の査定の結果を採用し、そこで本件一体画地の底地価額及び借地権の価額並びにこれに基づく本件一体画地を構成する本件個別画地の価額は(別紙一七)中の「一 画地の価額」のとおりとなり、さらに本件個別画地の価額を筆ごとに集計して本件宅地の各価額を算定すると、右価額は、(別紙一八)の中の「一 宅地の価額(単位・円)」における「認定額」欄記載のとおりとなる。

(二) 本件建築物の価額

吉野アプレイザルの査定の結果を採用し、したがって、(別紙一八)中の「三建築物の価額(単位・円)」における「認定額」欄記載のとおりとなる。

三 争点3について

1 被告らの補償金の支払請求に関する主位的請求及び予備的請求その一について

法九一条に基づく補償金は、施行地区内の宅地若しくは建築物又はこれらに関する権利を有する者で、権利変換期日において当該権利を失い、かつ、当該権利に対応して、施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の一部等又は施設建築物の一部についての借家権を与えられない者に対して支払われるものであり、被告らのように従前資産に対応する変換後資産が与えられる者に対して支払われるものではないから、法九一条に基づく補償金を請求する被告らの主張は、失当であって、採用することができない。

2 清算金の支払を求める予備的請求その二について

(一) 前記第二の二1(三)(五)の事実及び甲第四六号証の一ないし一一によれば、法一〇三条により確定した変換後資産の価額は(別紙一一)のとおりであり、本件権利変換計画において定められた本件従前資産の価額との差額はなかったことが認められる。

しかし、当裁判所の認定にかかる本件従前資産の価額は後記のように(別紙二〇)記載のとおりであるから、原告は、被告らに対し、法一〇四条に基づき、本件従前資産の価額と変換後資産の価額の差額である(別紙二)記載のとおりの清算金及びこれに対する変換後資産の価額が確定した翌日である平成五年五月二五日から右清算金の支払済みまでの遅延損害金を支払うべき義務を負うものである。

(二) 被告らは、右清算金に対する遅延損害金については法一〇六条三項の規定が準用され、年14.5パーセントの割合を乗じた額であると主張するけれども、同条項は、施行者が清算金を徴収する場合の規定であり、清算金を納付すべき者が滞納した場合に督促状によって納付すべき期限を指定して督促する場合に適用されるものであって、施行者の清算金支払債務について適用されるものではない。そこで、施行者が支払うべき清算金に対する遅延損害金の割合については、これに対する特別の規定はないから、民法所定の年五分の割合によるべきものと解される。

四 結論

1 よって、本件各宅地及び建築物の相当と認められる価額、本件裁決の価額、原告の請求額、被告らの請求額(ただし、予備的請求の二)を一覧表に纏めると、(別紙一八)のとおりであって、本件宅地及び建築物毎の結論は、左記のとおりである。

(一) 甲事件について

(1) 本件四〇八番一、本件四二〇番二、本件四二三番一の各宅地の価額及び本件四三三番一の三の建築物につき裁決変更を求める部分は、原告の請求額と本件裁決における価額が同じであるから、訴えの利益を欠くものである。

(2) 本件四二一番三、本件四三二番二、本件四三二番三及び本件四三三番二の各建築物の価額は、原告の請求のとおりであると認められるので、右各建築物の価額の変更を求める請求は、理由がある。

本件四一九番一の宅地の価額は、原告の請求額よりも低い額が相当と認められるので、右宅地の価額の変更を求める請求は、原告の請求の限度で理由がある。

本件四二一番二、本件四二二番一、本件四一九番四、本件四二一番一、本件四二二番六の各宅地については、原告の請求額よりも高く本件裁決の額よりも低い価額が相当と認められるので、右宅地の価額の変更を求める請求は、右の限度において理由がある。

原告のその余の請求は、理由がない。

(二) 乙事件について

(1)① 主位的請求のうち、本件四三四番一、本件四三四番二、本件四三五番三の各宅地、本件四三四番一及び本件四三四番二の各借地権の価額につき裁決の変更を求める部分は、被告らの請求額が特定されず、また、本件四三二番三、本件四三三番一の三及び本件四三三番二の各建築物につき裁決変更を求める部分は、被告らの請求額と本件裁決における価額が同一であるから、訴えの利益を欠くものである。

② 主位的請求のその余の部分は、本件権利変換計画に定められていない借地権の存在を前提とし、かつ補償金を請求するものであるから、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

(2) 予備的請求の一のうち、本件裁決における価額の変更を求める部分について

① 本件四三四番一、本件四三四番二、本件四三五番三の各宅地、本件四三四番一及び本件四三四番二の各借地権の価額につき裁決の変更を求める部分は、被告らの請求額が特定されず、また、本件四三二番三、本件四三三番一の三及び本件四三三番二の各建築物につき裁決変更を求める部分は、被告らの請求額と本件裁決における価額が同一であるから、訴えの利益を欠くものである。

② 本件四三二番二、本件四三二番三、本件四三三番四の各宅地の価額は、被告らの請求額よりも高い額が相当と認められるので、右宅地の価額の変更を求める請求は、被告らの請求の限度で理由がある。

本件四二八番三、本件四二三番一、本件四三三番一、本件四三三番二、本件四三三番三の各宅地の価額は、被告らの請求額よりも低く本件裁決額よりも高い価額が相当と認められるので、右宅地の価額の変更を求める請求は、右の限度において理由がある。

本件四二二番一の宅地については、被告らの請求額が本件裁決の価額よりも低くなっているところ、被告らの請求額よりも高く本件裁決の価額よりも低い認定額が相当と認められるので、右認定額の限度において理由がある。

本件裁決における価額の変更を求める被告らのその余の請求は、理由がない。

(3) 予備的請求の二のうち、本件裁決における価額の変更を求める部分の請求原因は、予備的請求の一における本件裁決の価額の変更を求める部分と同一であるから、予備的請求の一と別個独立の予備的請求の二の意義はないので、不適法である。

2 右結論に従って各宅地及び建築物の価額を纏めると(別紙一九)のとおりであり、右内容を各被告毎に整理すると、(別紙二〇)本判決に基づく確定額のとおりである。

したがって、本訴の結論は、次のとおりである。

(一) 甲事件

(1) (別紙四)「原告の請求する宅地、建築物及び借地権の価額」中、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の4番、6番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「2 建築物」についての各訴えは、不適法であるから、いずれも却下する。

(2) (別紙三)「本件裁決の宅地、建築物及び借地権の価額」中、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、3番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の2番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の2番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、2番、3番、5番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の4番、「2 建築物」の各価額を、(別紙一)「裁決変更額」の「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、2番、3番、4番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「2 建築物」の各価額に変更する限度で認容する。

(3) その余の請求は、理由がないから棄却する。

(二) 乙事件

(1)① 主位的請求のうち、本件裁決における価額の変更を求める部分につき、(別紙五)「被告らの請求する宅地、建築物及び借地権の価額」中、「一被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の5番から7番、「3 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の4番から6番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の4番から6番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「1 借地権」の1番及び2番、「2 建築物」についての各訴えは、不適法であるから、いずれも却下する。

② 主位的請求のその余の部分は、本件権利変換計画に定められていない借地権の存在を前提とし、かつ補償金を請求するものであるから、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、棄却する。

(2) 予備的請求の一のうち、本件裁決における価額の変更を求める部分につき、

① (別紙七)「被告らの請求する宅地、建築物及び借地権の価額」中、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の5番から7番、「2 建築物」、「二 被告Bに係る宅地の価額」の4番から6番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の4番から6番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「2 建築物」、「一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額」の「1 借地権」の1番及び2番、「2 建築物」についての各訴えは、不適法であるから、いずれも却下する。

② (別紙三)「本件裁決における宅地、建築物及び借地権の価額」中、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の3番、4番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の2番、3番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の2番、3番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、6番ないし10番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、「八 被告Jに係る宅地の価額」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番の各価額を、(別紙一)「裁決変更額」のうち、「一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の2番、3番、「二 被告Bに係る宅地の価額」の1番、2番、「三 被告Cに係る宅地の価額」の1番、2番、「四 被告Dに係る宅地の価額」の1番、5番ないし9番、「五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番、2番、「六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」、「七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」、「八 被告Jに係る宅地の価額」、「九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額」の「1 宅地」の1番の各価額に変更する限度で認容する。

③ その余の請求は、理由がないから棄却する。

(3) 予備的請求の一のうち、補償金を請求する部分は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、棄却する。

(4) 予備的請求の二のうち、本件裁決における価額の変更を求める部分は、不適法であるから却下する。

(5) 予備的請求の二のうち、清算金を請求する部分については、(別紙二)記載のとおりの金員及びこれに対する平成五年五月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとする。

3 訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九二条本文、九三条一項本文を適用する。

4 仮執行の宣言につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法一九六条一項を適用する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官大喜多啓光 裁判官小島浩 裁判官清水知恵子)

別紙三 本件裁決における宅地、建築物及び借地権の価額

一 被告Aに係る宅地及び建築物の価額

1 宅地

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の三

一四四二万三一八三円

2

同市高砂二丁目四二一番二

一分の一

四二一七万〇〇〇〇円

3

同市高砂二丁目四二二番一

二二四七九分の

一六五三

二一四四万六八六四円

4

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

5

同市高砂二丁目四三四番一

三分の一

五八五万五〇〇〇円

6

同市高砂二丁目四三四番二

三分の一

五一七万〇三三三円

7

同市高砂二丁目四三五番三

三分の一

二七万九三三三円

合計

一億〇二五一万九八五五円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四三二番地三

四三二番三

一分の一

七三一万三〇三九円

3 価額の合計 一億〇九八三万二八九四円

二 被告Bに係る宅地の価額

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の三

一四四二万三一八三円

2

同市高砂二丁目四二二番一

二二四七九分の

一六五三

二一四四万六八六四円

3

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

4

同市高砂二丁目四三四番一

三分の一

五八五万五〇〇〇円

5

同市高砂二丁目四三四番二

三分の一

五一七万〇三三三円

6

同市高砂二丁目四三五番三

三分の一

二七万九三三三円

合計

六〇三四万九八五五円

三 被告Cに係る宅地の価額

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の一

四八〇万七七二七円

2

同市高砂二丁目四二二番一

二二四七九分の

六六二

八五八万九一二五円

3

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

4

同市高砂二丁目四三四番一

三分の一

五八五万五〇〇〇円

5

同市高砂二丁目四三四番二

三分の一

五一七万〇三三三円

6

同市高砂二丁目四三五番三

三分の一

二七万九三三三円

合計

三七八七万六六六〇円

四 被告Dに係る宅地の価額

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四二二番一

二二四七九分の

一八五一一

二億四〇一七万一一四六円

2

同市高砂二丁目四一九番一

一分の一

二億二九三八万四〇〇〇円

3

同市高砂二丁目四一九番四

一分の一

二二五七万六〇〇〇円

4

同市高砂二丁目四二〇番二

一分の一

一億五八五〇万三五七三円

5

同市高砂二丁目四二一番一

一分の一

二億八一五三万九〇〇〇円

6

同市高砂二丁目四二三番一

一分の一

三六六七万三一七〇円

7

同市高砂二丁目四三二番二

一分の一

一億一五二七万四〇〇〇円

8

同市高砂二丁目四三二番三

一分の一

一億六六九三万二〇〇〇円

9

同市高砂二丁目四三三番一

一分の一

一億八八一四万一〇〇〇円

10

同市高砂二丁目四三三番三

一分の一

一億七六六八万八〇〇〇円

11

同市高砂二丁目四三六番九

一分の一

六〇八万九〇〇〇円

合計

一六億二一九七万〇八八九円

五 被告Iに係る宅地及び建築物の価額

1 宅地

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四三三番二

一分の一

一億四二八一万四〇〇〇円

2

同市高砂二丁目四三三番四

一分の一

一四九万六〇〇〇円

合計

一億四四三一万〇〇〇〇円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四三三番地二

四三三番二

一分の一

二六七万八〇〇〇円

3 価額の合計 一億四六九八万八〇〇〇円

六 被告Eに係る宅地及び建築物の価額

1 宅地

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の三

一四四二万三一八三円

2

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

合計

二七五九万八三二五円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四三二番地二

四三二番二

二分の一

三三四万七八二七円

3 価額の合計 三〇九四万六一五二円

七 被告Fに係る宅地及び建築物の価額

1 宅地

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の三

一四四二万三一八三円

2

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

合計

二七五九万八三二五円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四三二番地二

四三二番二

二分の一

三三四万七八二七円

3 価額の合計 三〇九四万六一五二円

八 被告Jに係る宅地の価額

所在及び地番

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

九 被告Gに係る宅地及び建築物の価額

1 宅地

番号

所在及び地番

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四〇八番一

一六分の三

一四四二万三一八三円

2

同市高砂二丁目四二八番三

七分の一

一三一七万五一四二円

3

同市高砂二丁目四二一番三

一分の一

九三二七万八〇〇〇円

4

同市高砂二丁目四二二番六

一分の一

一一二一万六〇〇〇円

合計

一億三二〇九万二三二五円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四二一番地

三、四二一番地一、四二二番地

一、四二三番地一

四二一番三

一分の一

一八五四万五〇〇〇円

3 価額の合計 一億五〇六三万七三二五円

一〇 被告株式会社Hに係る借地権及び建築物の価額

1 借地権

番号

借地権の目的となっている

宅地の所在及び地番

借地権の目的となっている

宅地の面積

権利割合

価額

1

草加市高砂二丁目四三四番一

15.05m2

一分の一

七二一万五〇〇〇円

2

同市高砂二丁目四三四番二

2.30m2

一分の一

一一〇万三〇〇〇円

3

同市高砂二丁目四三三番一

60.05m2

一分の一

二八七八万八〇〇〇円

4

同市高砂二丁目四三三番二

5.24m2

一分の一

二五一万二〇〇〇円

合計

三九六一万八〇〇〇円

2 建築物

所在

家屋番号

権利割合

価額

草加市高砂二丁目四三三番地一、

四三四番地一

四三三番一の三

一分の一

七〇万一八七八円

3 価額の合計 四〇三一万九八七八円

別紙一、四ないし二〇<省略>

別紙図面一、二<省略>

別紙二 清算金

一 被告A 一一四四万七八六四円

二 同B 六三三万〇九五四円

三 同C 五〇七万六二九一円

四 同D

二億二二〇五万四〇四六円

五 同I 三七三九万二三七八円

六 同E 一八三万二二一三円

七 同F 一八三万二二一三円

八 同J 一八三万二二一三円

九 同G 七九一万七六二二円

一〇 同株式会社H

一一三〇万五五三六円

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